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上海ブランド最新事情
~日本企業は一大消費市場で地歩を築け!

 「世界の工場」と言われて久しい中国。我が国の企業にとっても、同国は重要なサプライチェーンの一端を担う存在である。ただご承知のように、ここにきて中国が巨大な消費市場としてにわかに注目を集めている。
 今回は、2001年12月のWTO(世界貿易機関)への加盟で市場開放が進み、江沢民から胡錦涛へのバトンタッチで指導部の若返りが図られ、さらに2004年から四年間の開催が決まっている上海F1(フォーミュラワン。記念すべき第一回は私も観戦に行ったが、大盛況だった)、2008年の北京オリンピック、2010年の上海での万博開催という具体的な日程に向かって目覚しい進化の時を迎えている同国の、ブランド意識、ブランド事情を紹介する。

ブランディングファームとして我が国から初参入 

 グラムコは、和製ブランディングファームとして初めて、2004年5月に上海に現地法人を設立した。生産拠点こそ保有するものの、日本企業が中国を消費市場として捉え始めたのはここ数年のことである。当社はその動きをバックアップすべく、展開の時期をうかがっていたわけだが、かねてから有能な提携先(LEXIS上海藍奇設計)に恵まれていたおかげでスムーズに設立の運びとなり、当社単独で十名弱、提携先を含めると30名の体制で7月より本格稼働している。欧米系ブランディングファームは主に香港に拠点を構えており、北京、広州などを含むメインランドへの進出は、世界のブランド専門家集団としても当社が初めてとされている。
 幸いにも設立とほぼ同時に日中合弁企業のブランディングプロジェクトを受注できたことは、当地事情にいち早く精通するのに大変有益であった。このプロジェクトについては、本稿の後半で詳しく説明することにする。私自身現地側の董事長(会長兼経営責任者)を兼務していることもあり、設立以降月一度は必ず現地へ出張しており、実はこの原稿も上海で執筆している。

中国市場への第一歩は上海から

 中国市場と一口に言っても、それを一元的に捉えるわけにはいかない。日本のおよそ25倍の国土に、日本の10倍以上の国民がいる巨大国家であり、経済的地域格差も文化の違いも大きく、日本のような単一のマーケットと捉えることはできないだろう。
 主要都市の中でも、グラムコがオフィスを構えた上海は、とりわけ商都としてグローバル化が進んでおり、一人当たりGDPが高いとされる沿岸部でも、突出して富裕層の多い都市である(一人当たりGDPで全国平均の八倍といわれる)。人口は1500万人だが、モノ、サービス、文化などの流行の発信拠点として、周辺部や他の都市部への影響は甚大だ。
 進出企業の中でも各社の市場戦略は異なるが、「まず上海で成功させて、その上で他の都市部へと広げる」という青図を描くところが少なくない。中国内の生産拠点とは切り離して、上海市内にオフィスを開設する企業も増えている。ビジネスの第一歩は上海から、というわけである。
 日系企業間の情報交流の場ともなっている上海日本商工倶楽部(主だったメジャーな企業が法人会員として加盟)によると、2004年10月現在の会員企業数は約千六百社で、そのうち2004年4月から7月までの四カ月間で新たに加入した企業が120社と、わずか3分の1年で1割近く会員が増加した計算になる。関連法人まで含むとその数は4300社に上るという話も聞く。さらに2004年12月に独立資本(外資)によるフランチャイズ等を含む販売会社の設立が解禁となり、現地JETROは、2005年の今年はチェーン店や無店舗販売まで入れた非製造業の進出ラッシュとなる、という見方を示している。

消費意欲旺盛な上海の人々

 上海の市場としての魅力は、先にも述べたとおり都市としての情報発信力が高いことである。また、「上から15%」などと言われる富裕層も多く、先進的流行に敏感な市民が多数いることも挙げられる。目抜き通りの南京路や准海路にはルイ・ヴィトンやエルメス、ブルガリ、フランクミューラーなどの一流ブランド店が軒を並べ、値段も店構えも銀座と変わらない。東京の新宿に似た街区、徐家匯(シゥジャーホイ)の百貨店に行けば、最新の液晶・プラズマテレビがずらりと展示された特設コーナーをよく見かける。
 五年前には「大衆」(フォルクスワーゲンのこと)ブランド一色だった自動車では、日本のホンダやトヨタ、米国のGM、フォードが増え、ベンツやBMWの高級車もよく目にするようになった(ホンダは先のF1で2位に輝いたこともあり勢いが出てきた)。自動車税や、輸入車の場合は関税が高いため、価格は日本の2倍近いが、購入意欲は旺盛である。各社の供給力が高まったこと、道路整備が進んだこと、上海で仕事をする人々の住宅が郊外に広がりつつあることなども要因だが、自動車ブランドの自己体現機能、つまり持つ人のステータスを表すところが上海人の所有欲を刺激しているのだ。
 一部の富裕層に限らず、中間層の消費意欲も高まっている。既にローソンやファミリーマートも進出しているが、地元資本を含むコンビニエンスストア(「便利店」と呼ばれる)の数は上海エリアだけで8500店に達し、カルフールなどのスーパーマーケットも2000店以上あるとされる。しゃれたデザインの廉価な家具を売る大型家具雑貨店、イケア(本社:スウェーデン)も日本より先に出店しており(日本進出は2006年)、欧米の各店同様、週末ともなると多くの地元っ子でにぎわっている。

消費意欲旺盛な上海の人々


表1 「ブランド」と聞いて、あなたがパッと思い浮かべたブランドは?

表2 「ブランド」との出会いはどこにありましたか?

 グラムコは1998年以来首都圏で、独自の「生活者ブランド意識調査」を実施してきたが、昨年から上海においても同様の調査を行うことにした(第1回は2004年8~9月実施)。上海人のブランド意識は今日どうなっているのか。その一部(表1、表2)を、以下にかいつまんで紹介しよう。
 対象サンプル数は300(男女各々150名)と少ないが、数カ所の会場に対象者を集め、本人確認のうえ回答用紙に自記入してもらうなど、精度を上げるため最大限の工夫を凝らした調査である。世帯月収は5000元から2万元まで。コアを6000元(一人民元=14円で計算すると8.4万円)付近と設定、25歳から44歳までのホワイトカラー世帯に絞った。このうち管理職は30%。上海ではダブルインカムが主流なので、女性サンプルの多くが有職者である。教養がある一流企業のサラリーマンおよび経営者と考えていただきたい。中流から上流、まさに消費の牽引役である。


業界を代表するブランドとは

 「それぞれの業界を代表するブランドとは何ですか?」との調査結果については、表3をご覧いただきたい。この結果について、特に注目すべき点を以下に挙げてみよう。


表3 それぞれの業界を代表するブランドとは何ですか?

(1)飲料におけるサントリーの健闘。地道なサンプリング・プロモーションなどで一日の長の感がある。(2)自動車では近年ホンダやトヨタもよく見かけるようになったが、ブランドという観点からはまだ意識されていない。氾濫しすぎているフォルクスワーゲンから他のブランドへと乗り換えたがっている人も多く、そこに日本勢のチャンスがある。(3)時計ではスウォッチグループが上位5ブランドのうち3つを独占している。(4)同様に化粧品でもロレアルグループが健闘している。つまり、ブランドが効果的に売上に繋がる分野では、欧州勢がこぞって上海・中国市場に力を入れ始めており、その成果が表れ始めている。(5)パソコンはかつて聯想(Lenovo)の牙城だったが、米国勢に侵食されている。(6)携帯やブラウングッズでは韓国・サムスンの躍進が目覚しい。
 このように、健闘著しい日本ブランドもあるが、欧米勢や韓国勢の台頭も顕著で、日本は至近の距離にいながらこの市場で十分ブランドとしての認知を得るには至っていないといえる。一方国内での内なるグローバル化が一気に進展するこの市場においては、今後苦戦するのは中国上位メーカーだ。そこに彼らのブランド課題がある。聯想によるIBM・PC部門買収の話題も、これに無縁ではない。

日中合弁企業でブランディング

 冒頭に述べたグラムコ上海がサポートしているブランディング事例を紹介して、本稿を締めくくろう。それは、総合商社・丸紅と現地資本が手を組んで1998年に設立した「上海好世置業有限公司」(図1・2)だ。上海郊外にタウンハウスや戸建住宅を供給するデベロッパーで、当地で成功を収め、日本でもたぐいまれな合弁成功事例として経済誌に紹介されるほどの躍進を遂げている企業である。プロジェクトは、総経理である薛暁路氏と副総経理の徳永貴司氏を中心に推進された。2005年3月に開催される住宅総合展を皮切りに本格的なブランド展開に入っていくが、骨子はすでに完成し公表されている。
 同社は富裕層だけでなく、これからの中国を担う中流層にも照準を合わせて、彼らに手の届く最高の住環境を提供する、という方針を掲げている。この点が富裕層一点張りの他の物件開発者とは趣を異にしており、広く大衆の支持を集めるブランドとして認知されつつあるのだ。企業としてのブランドスローガン、「夢想建築未来」(Building a Future on your Dreams. 夢が未来を築く)、住宅販売にあたってのサービススローガン、「好世好生活」(Better Time, Better Life. 良い時代に良い生活)にも、その企業としての意志が表れている。
 このブランド構築推進に踏み切った要因として、ちょうど好世が発展期に差しかかり次の成長へのビジョンを掲げるべき時期にきていたこと、これまで物件名で認識されてもコーポレートブランドで選ばれていなかったことなどが挙げられるが、もう一つの要因は、上海市の商標協会や消費者保護委員会、房地産行業(不動産業)協会らが主催する「上海市房地産品牌(商標)推展活動」である。人生で最も高価な買い物でありながら、一部で不透明感や不信感もくすぶる不動産業において、真のブランドを創出しようという動きが、行政側にもあるのだ。3年前から始まり昨年も開催されたこの「商標コンテスト」に好世も名乗りを上げ、ブランディング活動の成果が評価を得て、上位ブランドとして認定していただくことができた。
 いま上海では、市民も行政もブランドに注目している。それが単にお金持ちのためのものだけではなく、消費者保護の観点からも必要だという意識がある。よいブランドは人々の尊敬を集め、ブランドを構築できない者は敗者となる。そんな風潮と社会基盤が整いつつあるのが、今日の上海といえるだろう。


図1

図2

グラムコ(株)代表取締役社長/
グラムコ上海有限公司 董事長
山田 敦郎

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