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事例紹介2
UAブランドの成功への飛躍
(“A New Brand Soars to Success”)

 ジェリー・ダウ氏は、今回の講演の中で、近年のUnited Airlines(以下UA)のマーケティング活動について、「差別化」と「多様化」の観点から解説を行った。
 以下、ダウ氏の講演に基づき、UAにおける近年のマーケティング戦略の概要を紹介する。

主要市場における差別化の実現

 UAが展開するサービス、およびブランドのカテゴリーは多岐にわたっている。ダウ氏自身、これだけ多くのカテゴリーを有していると、中には完全にはコントロールできないものが出てくることを認めている。またUAが保有する航空機は六百機近く、仮に新たなサービスの開発に成功しても、そのサービスを一気にすべての機内に導入することは現実には難しい。ダウ氏は、こうした状況においてこそ、企業にとって「強いブランド」を有していることが極めて重要となると述べている。顧客から、安定したロイヤルティを得ることができる「強いブランド」があれば、企業はある程度の余裕をもって、環境変化へ対応する新たなビジネスモデルの構築、実行が可能となり、同時に新しいイノベーションの実現も可能になる。
 UAは顧客体験の向上に向けたイノベーションや差別化の追求を重要視しており、こうした変化を率先して行うことで、業界をリードすることを自らの役割としている。2004年2月に発表された機体や空港内のカウンター等のデザイン刷新は、顧客体験の継続的な改善に向けた取り組みの一環である。(ダウ氏は講演の中で、今回の機体色の刷新の背景として、UAの明るい将来を表現するという意図があったことも紹介した)
 航空業界は、一般に他業種と比較して競合との差別化が難しい、とダウ氏は述べている。従って、競合との差別化の機会をいかにして発見するかが、各社共通の重要な課題であり、これは数年前のUAにおいても同様であった。そうした環境の中でUAは、顧客との関係を再構築し、自社の顧客に対し、「機能」だけでなく「価値」を訴求することによって、差別化の実現を図ろうと試みた。ここで重要となるのは、誰に対して自社の価値を訴求するか、という点であるが、UAはまず、その焦点を自社の主要顧客であるビジネス・トラベラーに定めることとした。自らの成長の実現に向け、まず、ビジネス・トラベラーを対象とした市場において「強いブランド」の確立を図り、次にそれを起点とした新たなビジネスモデルやイノベーションの実現を図ったのである。
 UAは、自社の主要顧客であるビジネス・トラベラーは、明らかに他の一般の顧客と航空会社やサービスに対する理解や意識、ニーズが異なると考え、コミュニケーション展開にあたっては、ビジネス・トラベラーの感覚にフィットさせることを最も重要視した。UAは、多数のフォーカス・グループ・インタビュー等の調査を通じて何度となく広告上のメッセージの練り直しを行い、こうして完成した広告のメッセージは、それまでのものと比べて大きな変化を遂げていた。

〈広告におけるメッセージの一例〉

  • 「電話会議では人生に参加できません」
  • 「ビジネスは戦いの連続だ。あなたの為に戦車をご用意します。」
  • 「オフィスで快適な場所を見つけることだけでは、自分の居場所は見つかりません」

 このように、新しいUAの広告戦略は、従来のように路線数を誇るといった機能的な訴求ではなく、「UAは皆様の成功を応援しています。UAは皆様のビジネスが成功するような輸送手段を提供しています」といった、顧客にとってUAがどのような価値を提供するか、について訴求する内容に変化を遂げた。
 こうした広告戦略は、グローバルレベルでの統一が図られていると同時に、それぞれの地域に合った表現の開発を目指している。ダウ氏によれば、UAではただ単に本国の広告を翻訳して各地域に投入するだけではなく、各地域により適切なメッセージの開発を目指している。
 新しい広告キャンペーンは、テレビやプリントメディア、eメール、ラジオといった様々なメディアを活用して統合的に展開された。結果、多くのビジネス・トラベラーに対して、UAブランドに対する感情的なコネクション、ロイヤルティを高めることに成功したと、ダウ氏は述べている。

多様化の実現“Ted”と“p.s.”

〈“Ted”〉
 UAでは現在、UAブランドの「多様化」についても、積極的な取り組みを開始している。ダウ氏によると、UAの調査では、顧客はレジャー、ビジネス、インターナショナル等々、それぞれ全く異なるニーズに基づきUAを利用していることが確認されている。こうした多種多様なニーズに対応し、かつ収益性も伴うブランドの開発が必要とされ、社内で検討を重ねた結果、“Ted” が誕生した。“Ted” はまぎれもなくUAの一部ではあるが、全く別のブランドとして扱われている。現在のところ、“Ted” は戦略的に一部の地域で提供されるにとどまっている。
 “Ted” の最大のポイントは、座席がすべてエコノミークラスであり、従来のUA機より18席ほど座席が増加している点にある。また空港内のカウンターやウェブサイトも別となっており、“Ted” のウェブサイトでは、すべての運賃プランが分かるようになっており、顧客は自らのニーズに沿って好きな便を選ぶことができる。
 ダウ氏によると、“Ted” の開発にあたりUAが実施した調査において、UAの顧客ではないグループは「低価格航空便に何を求めますか」という質問に対し、「特に何も求めない。雰囲気とかそういうものはいらないけれど、低価格が良い」と答え、一方でUAの既存顧客グループに「あなたはUAに対して何を求めますか」と尋ねると、彼らは「すべていいものが欲しい。搭乗手続きが簡単であるとか、ステータスがあるとか、マイルのポイントも貯まるといいと思う」と答えたという。このように全く異なるニーズへの対応を図るため、UAはこれまでのUAブランドとは異なる位置付けとなるブランドとして “Ted” の導入を決定するに至ったのである。
 “Ted” はまずデンバーでそのスタートを切る。ダウ氏は、デンバーが選ばれた理由を、低価格航空便の競合があり、メディアの価格も安く、他から離れた場所だったので、UAとしてもこれまでと異なる取り組みを積極的に展開しやすい場所だったためと説明している。実際、スタートアップのキャンペーンは、それまでのUAのものとは大きく異なるいくつかの大胆な取り組みが実行された。結果として“Ted” は大変良いスタートを切り、今では高い顧客満足度、購入意向度を獲得し、事業としても大変良い成果を上げている。現在では、デンバーでの成功を契機に、ワシントンDCとシカゴにおいても導入されている。

〈“p.s.”〉
 UAブランドの多様化に向けた取り組みのもう一つの例が、“p.s.” である(“p.s.”は現在、ニューヨークとサンフランシスコ間、ニューヨークとロサンゼルス間でのみ運行)。これまで、両路線のフライトは国際線並み(ニューヨークとロンドン間とほぼ同程度)の時間がかかるものの、提供されているサービスは国内線仕様であった。UAでは、こうした路線での顧客体験の刷新を目的として、“p.s.”においては、ファーストクラスはすべてフルフラットシート(米国の国内線でフルフラットシートを提供しているのは “p.s.” のみ)、ビジネスクラスは座席数が拡張されてすべての座席が革張り、エコノミークラスはすべての座席の間隔が通常より広いエコノミープラスの仕様といった、顧客に対する快適な機内空間の提供を意識した設計を採用している。また機内サービスについても、トップグレードのケータリングや食べ物、ワインの充実を図るとともに、ファーストとビジネスの両クラスには専用DVDプレイヤーを用意し、すべての座席にパソコン用電源を用意するなど、従来と比べて大幅な拡充が図られている。また “p.s.” の広告表現は、ビジネスで頻繁に出張する人たちをターゲットに、オピニオンリーダー向けのものの内容となっている。

 このようにUAは基幹ビジネスであるビジネス・トラベラー市場での差別化を通じた「強力なブランド」構築を図ると同時に、“Ted” や “p.s.” といった従来のUAブランドとは異なる位置付けのブランドを展開し、UA全体のブランドポートフォリオの最適化の実現に向けたブランド戦略を推進している。ダウ氏は、UAは今後も、UA(ユナイテッドエアライン)、ユナイテッド・エクスプレス、“Ted” 、スター・アライアンスといった既存資産を活用しながら、UA全体のブランドポートフォリオの拡充と、その最適化を推進すると述べ、講演を締めくくった。

Managing Director, Worldwide Marketing and Communications, United Airlines
Jerry Dow(ジェリー・ダウ)氏

<レポーター>
電通統合マーケティング局ブランドコンサルティング室 西口正敏
日本経済新聞社東京本社 広告局業務推進部次長 横田浩一

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