音声ブラウザ専用。こちらより本文へ移動可能です。クリック。

NIKKEI

NIKKEI AD Web

広告申し込みに関するお問い合わせはこちら

English Page


CB Valuatorとは?
ブランド価値ランキング
日経企業イメージ調査
実践コーポレートブランド
日経ブランディング

<パネルディスカッション>
ブランド・ポートフォリオストラテジーの実践

 阿久津 日本企業としてどのようにブランド・ポートフォリオの戦略というものを理解し、遂行したらいいのかということに焦点を当てて話を進めていきたいと思います。まずは横田さんから、我が国における経済・経営の流れの中で、本セミナーのテーマである「ブランド・ポートフォリオストラテジー」というものがどのように位置づけられるのかについて、お話しいただけますか。

コーポレートブランドとCSRの関係はより密接に

 横田 最近の経営課題では、CSR(企業の社会的責任)が話題として取り上げられるようになっております。まず、このCSRとコーポレートブランドのかかわりについてどのように考えていくか、という視座から始めさせていただきます。
 CSRを実行しますと、その効果は主に三点あり、一つ目は不祥事の防止を目指している点。 二つ目は、顧客、投資家などに企業イメージを持続・向上できるという点。三つ目は、企業イメージの向上で従業員の士気が上昇するという社内的な効果があるという点です。
 日本経済新聞社が実施した「企業の社会的責任に関する調査」で、ビジネスマンに対して「CSRが進んでいる」イメージの上位企業を調べましたところ、トヨタ自動車、ソニー、松下電器産業、キヤノンなどが上位に挙がっています。個人投資家調査において同様の項目を聞くと、やはり1位はトヨタ自動車、以降日本航空、東京電力、東京ガスなど、インフラ系、運輸系の企業が上位に多く登場します。トヨタ自動車がなぜそんなに強いのか、というところですが、日経企業イメージ調査の結果を見てみると、プリウスを投入し、ECOキャンペーンを実施したころから、「地球環境に配慮している」イメージが急激に上昇しており、そのイメージの強さがこのような結果につながっていると考えられます。
 社会的責任経営がどのように企業価値につながるのかということですが、先の社会的責任に関する調査によると、「価格が高くても環境に配慮している企業の商品を購入する」という人が約八割、「価格が高くても従業員を大切にしている企業からものを買う」という人が約六割という結果になっています。いまやこのような分野の企業イメージが、消費者購買行動にもかなり影響を与えているということが言えるのではないでしょうか。
 社会的責任経営の中で何がいちばん大切なのか、という点について調査したところ、「社員の安定的な雇用」「高齢者の雇用機会」「社員の実績や能力に応じた処遇」という、雇用に関する項目が、環境や社会貢献の項目より上位に挙がっております。従来、日本型経営の特徴であった長期雇用や、社員に生き生きとした職場を提供することも重要だと考えているビジネスマンが多いといえるようです。
 これらの企業イメージを、どのように社内外にコミュニケーションしていくかということも非常に重要な点となっています。昨年末の日経広告賞では、上位三賞受賞作品はすべて、CSRのコミュニケーションと言ってもいい作品でした。エアバッグやチャイルドシートを作っているタカタの「交通事故ゼロ」への想いの広告、JTの喫煙のマナー広告、産業廃棄物処理で地球環境保持に貢献している大平興産の広告です。
 このようなことから、CSRとコーポレートブランドの関係は、いまや欠かせないものとなっていまして、日本におけるブランド・ポートフォリオストラテジーを議論する視座として、注目したら面白いと思っております。
 阿久津 ありがとうございました。 では、これを受けまして、プロフェットの坂手さんから、ブランド・ポートフォリオストラテジーということをブランドのマネジャーとしてはどのように考えていけばいいのか、ということについてお話しいただきたいと思います。

ブランド実現のための手法

 坂手 通常の企業活動とブランドのいちばん大きい違いというのは、やはり機能的価値の上に情緒的価値があるという点です。ティファニーの水色の箱には、ティファニーが売っている宝飾品のみならず大切な人にプレゼントをする気持ちなどが入っている、と人々は感じています。ブランドとは、顧客の心の中につくる企業からの「約束」ですから、ただ広告宣伝を打ち続ければいいというものでもなく、むしろ、お客様が期待し、企業からの約束というものが実際に果たされたと感じて、だんだんそのブランドが好きになっていくという企業サイドと個人サイドの間にできてくるものです。
 最近、中国の「レノボグループ(聯想集団)」がIBMからPC事業を買いました。その金額からこれはブランドを買ったと見ています。それほどブランドの価値が商品そのもの以上に売買の対象となる時代になってきています。ブランドの効果という意味では顧客維持のコストが下がるとか、価格競争をしなくて済むとかの効果がありますが、社員がブランドに共感してプライドを持って仕事ができるという点も大きいと思います。
 ディズニーという会社は非常に強いブランドを持っていて、子どもの夢を壊さない、期待を裏切らないことを徹底しています。そのために「プリティーウーマン」という映画では売春婦が登場することから、同じディズニーグループでも、タッチストーンピクチャーズというディズニーと関係のないブランドで一線を引き、ポートフォリオマネジメントをしています。そのやり方ですが、やはりこれはトップが関与しなければ難しい。あらゆるタッチポイントと通じてお客さんに一貫した約束を提供しなければならなく、機能横断的にいろいろなアクションをとらないといけないからです。日本の会社ですと、3年から5年で人事異動もありますし、どのようにCEOの関与を得てやっていくかということは日本企業の大きな課題です。
 また、問題点として、ブランドの担当者が少ないということも挙げられます。 通常アメリカの企業ではブランド関連の組織というのは数十人いて、ブランドブックですとかブランドエッセンスビデオなどをつくって管理しています。以前ある広告会社と仕事をしたときに聞いてみたら、日本の名だたる大企業でもそのようなビデオはほとんどつくっていないとのことでした。なぜなら終身雇用で何十年も働いているので、企業風土、カルチャーがブランドになっているので必要ないだろうという誤解があります。そういう意味でブランド運営組織の課題というのは日本企業にとっては大きな課題なのですが、方向性としては徐々に、役員の方々がブランドの価値を理解していくにつれて改善していくのではないかと期待しております。
 マスターブランドにこだわりすぎるのも日本企業が抱える問題点です。時には新しいブランドを立てるなりポートフォリオをつくるという発想が必要です。サムソンのブランドにおける成功はローエンドをばっさり切ったからです。 時とともにブランドの位置づけを変えていくのも重要なことです。プレイステーションは新しく売り出す時はソニープレイステーションとしてソニーブランドを借り、ある程度自立してきたらソニーを取りました。このように全体のポートフォリオを管理していくことが重要です。
 ブランド構築の基本的な考え方は、今持っている資産と今持っていないけれども将来的にほしい資産をつくり込んでいって、会社の新しいブランドをつくり上げていくというものです。プロフェットの考え方として市場機会、組織能力、ブランド、この三つがそろえば強いビジネスなのですが、欠けているものは外から買ってくればいいこともあります。
 ブランドを実現する手法としてタッチポイント・マネジメントがありますが、お客様の期待値に対して企業が発信する約束が常にその期待を超えていかなければなりません。期待値を大きく超えた時に好印象が残り、それがブランド体験ということになります。タッチポイントすべてに一貫したメッセージを送ることはとても重要です。
 インターナルブランディングの問題は大切です。広告宣伝キャンペーンが終わった後からがむしろ本番で、いかに社員がブランドを信じる、体験する機会をつくりながら社内浸透させるかが大切です。そしてそのブランドを体現している人たちをたくさんつくり、その人たちをロールモデルにして若い人たちが追いかけてくるという循環モデルがつくれれば最高です。
 阿久津 ありがとうございました。 次にクインランドの吉村さんから、最新のインターネット技術等を駆使することによって、組織が大きくなっても効果的にブランド体験を共有することが可能になるという、具体的なアプローチについてお聞かせいただきたいと思います。

マーケティング戦略とブランディング

 吉村 私どもは自動車の販売から事業を始めたわけですが、現在、デジタル化技術を使ってマーケティング領域のなかでどこをIT化するのか、ウェブ化するのか、スタンドアローンにするのかを徹底的に考えていくデジタル・マーケティング・エンジニアリング・サービスというマーケティング戦略の企画・構築・運営支援を提供している中で、どうしてもブランディングというものに触れざるをえない状況になってまいりました。
 たとえば、営業1人当たりの生産性をどうやって上げるかというITを提案したとします。マニュアルにしたりシステムにしたりするのですが、実践すると営業マンによってしゃべり方が違うわけです。その違いをどうやってコントロールしたらいいのだろうということに悩みはじめました。私どもは、自動車の販売事業としてお客様との接点はいくつあるかと数えましたら132もありました。電話、社員の服装、話し方もそうです。この132を全部コントロールするのは、これはもうシステムでないと不可能なわけです。どこをどうコントロールすればいいのかというのをマネジメントしてシステムをつくっていかないと本当の意味でマーケティングのお手伝いをした成果をもたらすことができないということで開発したのが、ウェブベースド・コンタクトポイント・マネジメントというシステムでございます。
 まずブランド主導型事業戦略の策定ですが、事業戦略、事業目標、それからそれを実現するためのサービスという目的資産体系に分けるということとお客様との約束というキーワードにすべてを集約させています。そしてまずアイデンティティーを整理してブランドのポジションを決めるのですが、その時びっくりするのはポジショニングのない会社ですね。「何を訴えたいのか教えてください」というとロゴを渡されることがあります。日本を代表する150社であってさえ、自らのブランドのポジショニングができていない。コーポレートブランドさえできていない。プロダクトブランド、商品ブランドなどはいわんやというところですね。そしてこのポジショニングを決める際にブランド・ポートフォリオをつくります。商品ベネフィットを軸としたブランド・ポートフォリオや財務データを軸としたボスコンのPPMのようなものもございます。
 続いてやりますのが、おのおののエレメントの整理、再構築です。企業ブランドがあって事業ブランドがあって商品ブランドがあって、ブランドネーム、ロゴタイプ、キャッチフレーズなどそれぞれのエレメントを整理していきます。 コンタクトポイントごとにターゲット別にすべてどこに接点があってそれをどうコントロールしていくかということをマトリックスで徹底的に洗い出しをします。
 それらの分析のあとに最後に何をするかというと、コミュニケーション戦略全体を見直します。費用対効果の関係でコンタクトポイントとしてふさわしいのはどこかという分類マップや一年間の事業計画、誰が何をやるのかをまとめたトータル・コミュニケーション・ガイドラインを作成します。
 こういったやり方でウェブベースのコンタクトポイント・マネージメントをやりますと非常にコストが下がります。 ウェブを使うことでコストは限りなくゼロでリーチは無限大です。それがマーケティング上はもう明らかに証明されているのですが、残念ながら、ブランディングという観点では、まだまだそこまでマーケティングとブランディングを考えている会社というのは日本では本当に少ないですね。

日本での戦略展開のポイント

 阿久津 今後、ブランド・ポートフォリオストラテジーを日本で展開するにあたって、ポイントとなるのは何でしょうか?
 横田 日本の企業のコーポレートブランド価値は大きいといえます。その戦略的活用をどう考えるかというポイントがこれからの課題であり、その意味で、ブランド・ポートフォリオストラテジーは大切だということです。展開する上でのポイントは三点で、差別性、イノベーション、そして情緒的価値につながる、それを実行していく人のエネルギーです。
 坂手 日本企業は認知品質がまだまだですが、ベースになる企業としての優秀さ、製品の優秀性というのがあるわけですから、いかにその上に情緒的な価値を乗っけていくかという意味では十分やれると思っています。吉村さんのようにITを使って行動を変えながら後から意識を変えるという手法もあっていいのかなというふうに最近感じています。
 吉村 我が社では必要にせまられて社員向けにお客様に伝える内容をデータベース化したわけですが、その際問題になるのはディスクローズの個人の意識です。日本の会社は何か隠そうとするじゃないですか。でも自分がノウハウだと思っていることが残念ながら時代遅れになっている可能性も大きく、だったら出したほうが絶対いい。昔ですと社長の方に情報が集まったものですが、そうでなく現場にあります。これはもうオープンにするしかない。
 阿久津 なるほど、モノづくりや暗黙知を重視してきた日本企業のマネジャーにとって、アーカー先生の言われるブランド・ポートフォリオストラテジーの立案と実践はそんなに簡単なものではないのかもしれません。しかし一方で、きちんとやれれば、高い成果が期待できるということですよね。本日お越しの(読者の)皆様が、価値あるブランドとブランド・ポートフォリオづくりのために、組織の「エナジャイザー」となって今後ますますご活躍されることを祈ってやみません。

ナビゲーター
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 助教授 阿久津 聡氏
パネリスト
日本経済新聞社東京本社広告局 業務推進部次長 横田浩一氏
プロフェット日本代表 坂手康志氏
株式会社クインランド 代表取締役社長 吉村一哉氏

お問い合わせサイトマップENGLISH