音声ブラウザ専用。こちらより本文へ移動可能です。クリック。

NIKKEI

NIKKEI AD Web

広告申し込みに関するお問い合わせはこちら

English Page


CB Valuatorとは?
ブランド価値ランキング
日経企業イメージ調査
実践コーポレートブランド
日経ブランディング

実践コーポレートブランド

日本広報学会創立十周年記念国際シンポジウム
パネル討論「中国社会の変化と広報のチャレンジ」

現在、日中関係はかつてないほど経済的な結びつきを強固なものにしている。多くの日本企業が中国に進出する一方、様々な問題に直面している。ここでは、2005年8月7日(日)に愛知万博会場で行われた日本広報学会創立10周年記念シンポジウムより、パネルディスカッションの模様を抄録する。

青樹 それでは今から討論に入りたいと思います。まずは日本企業と中国社会の変化という問題。もう一つは、変化した中国社会に対して日本企業がどう広報を進めていくか。この二つの柱を基にしてアプローチしていきたいと思います。

 それではまず最初のテーマなんですが、対中ビジネスを考えるにあたりまして大きく問題になるものが、今申し上げたように中国社会の変化なのではないかと思います。このように変わった中国社会、そして中国消費者に日本企業はどのように対処していったらいいのか、まずはそういうところから討論に入りたいと思います。

中国メディアの商業化

渡辺 まず、何が変わったかをちょっと確認させていただきたいんですが、90年代の後半位から非常にメディアが商業化してきました。純粋に民営とは言えないんですけれどもかなり商業化した、市場化したメディアが生まれて、そこがセンセーショナルな報道をする。かつ2000年位からネットが非常に強くなってきて、それがネットで流れた事がまたマスに流れて、ある種のクレームとかあるいは不祥事というのが広がっていくというような状況がこのところみえたというのがまず一つですね。

 あとは消費者権利意識っていうのが非常にやっぱり強くなってきました。中国も93年位から消費者権利保護法だとかあるいは製品品質法とかいうものを作りましたし、広告法のほうは94年から生まれて虚偽広告が禁止されるということがあります。そういうような消費者権益を保護するような法令整備がなされて、かつそれと同時に非常に強い消費者権利意識というのが生まれてきました。

 もう一つは民族意識の問題ですね。やはり90年代の後半に非常に民族意識といいましょうか自分達は中華であるという気持ちがすごく高まったこともまた事実です。私も現場に携わっていて広告を作っていましたけれど、90年代後半位から、割と民族主義の強いCMというのが国内の企業でも流れるようになりました。田舎のおばあちゃんの所へ行って何かプレゼントするとか、そういうような傾向が非常に強くなった。昔のような外資の広告っていうのはやや敬遠されているんじゃないかなと思えることがあったんですね。そういうような変化があって、それに対して日本企業はあまりアンテナを立ててなくて、多少愚直な製品志向というのが日本企業にはあるのではないかというところがありまして、企業あるいはブランドには勝てないというところがありました。製品が良ければ消費者がついてくるよというような、そういう意識があって、そこのところがアンテナがちゃんと立ってなかったんじゃないかなと思います。

 あともう一つは新中間階層の話ですが、これも社会階層構造の変化というふうに見えると考えます。ミクロのマーケティングとしては当然そこに対して1億2000万の人達を当然これから考えなくちゃいけない。ただ中国のある種のマクロの投資環境としては、上と下という貧富の格差というのが広がっていて、真ん中というのがどの程度ホントに育ってくるのかというのが一つの大きな問題だと思います。これが、真ん中がしっかりしていることによって中国の社会がしっかりしてくるのではないかと。この社会階層構造の変化はきちっと見ていかなければならない問題だというふうに思っております。

青樹 いわゆる日本の広報というものは、外国と比べてどういうような特殊性があるのか。他の国と比較して、日本企業の広報のあり方みたいなことを、ちょっとお話しいただけますでしょうか。

日本企業の広報への理解度不足

杉田 中国の広報市場の規模は40億元といった数字がこのシンポジウムの今朝の部でも出てきました。この20年ほどの間に、どうしてこれだけの規模に成長したかという要因はいろいろあります。その一つが、近年における「危機管理広報」のニーズの爆発的増加です。7月6日付の『チャイナ・デイリー』の記事には、今年の前半に中国において「問題」を起こした欧米の大企業の名前がリストアップされていて、こうした会社の危機がPR会社に大きな「恩恵」を与えたと書いてあります。

 北京や上海にある欧米系のPR会社の人と話をする際によく言われるのは、「危機管理」ということにおいて、日本企業はどうして広報上のアクションをあまり起こさないのかということです。彼らにとってみれば、非常に不思議なのです。この2、3年、かなりの数の日本企業が中国市場においていろいろな不祥事、トラブル、誤解、広報・広告上の問題を起こしてきたわけです。それに対してほとんどの企業はなすすべを知らないように見える。中・長期的な観点からすると、それではいずれ行き詰まってしまうのではないか、ということです。もちろん例外はあります。広報の機能を非常に上手に利用している日本企業もあります。しかし大多数は「危機」と「広報」を結びつけて考えることすらできないのではないかと見られています。このあたりの広報に対する理解度不足が、中国における日本企業と外国企業との基本的な違いではないでしょうか。

青樹 いわゆる日本企業の広報というのは危機が起きてからのアクション、これが今の日本企業の広報ということになってしまうということですか。

杉田 もちろん、危機が起きる前に準備をしておくほうが賢明なわけですが、基本的に日本企業の中では危機管理において広報がどのような役割を果たせるのかという認識が低いと思います。例えば、アメリカやヨーロッパの企業においては、新しいマーケットに進出する場合には必ず広報の機能を持たせます。

青樹 最近中国における外資の活躍その他、広報も含めてなんですけど、そういう話題になりますとなぜか韓国企業の活躍が必ずあがってくるのではないかと思います。韓国企業の動向といいますか、中国におけるビジネスのお話をちらっとお話しいただけますでしょうか。

韓国企業との相違点

 例えば我々が市場調査をやる場合、同じ家電メーカーでもだいたい日本企業の製品は安定性が良い、技術が良い、信頼ができるという結果が出ます。これは良いことなんですが、ただ韓国企業になりますと、非常にエキサイティングで非常にドキドキして非常に若々しい、非常にファッショナブルであると。今の中間層はもっとエモーショナルなものを求めるんですね。「私は好きだ」とか。そういったものは韓国企業が上手い、日本企業より一枚上手だということです。

 例えばキャッチフレーズで、「今すぐ思い出すキャッチフレーズはありますか」と20代・30代の中国人に尋ねたら、みんなが「ノキア」や「サムスン」のキャッチフレーズをすぐ言ってくれますよね。日本企業はどうかといいますと、今の中国では本当に誰にでも覚えられている、そういったキャッチフレーズはありません。でも、80年代、ご存知かもしれませんが、トヨタの「車到山前必有路、有路必有豊田車(車が山のふもとに到れば必ず道がある。道があれば必ずトヨタの車があるとの意)」というのがありました。これは、本当にいいキャッチフレーズで有名なんですね。なぜかというと、中国のことわざをうまく生かした、中国人なら、だれでもすぐ口にするようなキャッチフレーズでしたからね。

嶋原 あれは80年に作ったキャッチフレーズなんですが、徐さんが言われましたように、ことわざから引っ張ってきて、そのことわざもいわゆる「人はどんなに辛くても必ず諦めずに解決する方法がある」というような意味で、それをもじって後にトヨタのキャッチフレーズに入れたんです。

 ところで、これからの広報という話がさっきありましたけれども、やはり危機意識というのをどうやって持つかと言いますと、まあメディア危機と言いますかリスク管理というんですかね、我々は中国で色々な経験をしていますけれども、これは理屈では言えないんですけれども、なんとなく肌触りというのがあるんですね、これは感覚的にですね。それをなんで上手く感じるかと言いますと、やっぱり人間関係ですね。色々な人と話をしていて、「なんか、やばいぞ」っていう感覚っていうのはやはりそれぞれ皆さん持たなければいかんなと思います。色々な社会の雰囲気や街の評判ですね。そういった意味ではお互いにアンテナをものすごくきちっと立てて、色々なところでのアクセスポイントを持っておく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

日本企業のコミュニケーションの問題点

渡辺 先程の韓国企業のことでちょっと付け足したいんですが、昨年、日本企業の情報リスク、まあ先程のクレームの問題とかメディアのバッシングとかそういうことについてちょっと調べたんですね。そのときに色々な調査をしたのですけれど、大規模総合的な調査で、日本企業を好きかとか、あるいは好感があるかとか、あるいは日本製品をどう思うといったところの調査を、韓国企業と比較してやったんです。それでそのときの仮説としては、韓国企業が日本企業に比べて良いパフォーマンスをしているんじゃないかという仮説でやったんですけれども、総合的な訊き方をすると、やはり日本製品の信頼度って非常に高いんですね。ただ、日本企業そのもの、あるいは日本そのものになると若干低くなるんですが。

 ただ、そのときに定性調査として、日本で言えばJETROのようなところで韓国にKOTRA(Korea Trade-Investment Promotion Agency)というのがあって、そこに韓国企業が中国市場で成功している理由はなんだと思うかと訊きに行ったんです。そうしたら、特に政府として色々やっているわけじゃないけれども、二つくらいあるんじゃないかということでした。一つは、サブカルチャーっていうんでしょうか、韓国の芸能文化を含めた形の売り込み方が非常に上手いっていうこと。もう一つはトップのコミットメントっていうんでしょうかね、サムスンの会長も含めて、結構な頻度で中国に来て、きちっとした形でコミュニケーションしている。この二つはけっこう大きいのではないかという話がありました。

 それと、やはり日本企業っていうのは全体的に、地域というのをどういうふうに理解するか、あるいは世代間の階層の問題といいましょうか、ターゲットのセグメントに対してややゆるいようなところがあるんですね。そこのところが、つまりアンテナが立っていないというのだと思うのですが、そのへんは韓国企業はきちっと、どこに対してどういうメッセージを出すかということに対しては非常にはっきりしている。ただそれは大きな数字には結びついていなくて、たぶん日本企業のトップの方は大きな数字で日本企業の信頼性は高いということで満足されているんだけれども、細かいところで見ていくとけっこう差があるんじゃないかなというふうには思います。

青樹 その点について杉田さん、いかがお考えになりますか?

杉田 そうですね、例えばサムスンは『ビジネスウイーク』の8月1日号の中で、過去五年間に最もブランド価値を上げた企業として特記されていますが、その広報活動は中国でも非常に認められています。日本企業は優秀な製品を作っているのは確かです。しかし、韓国や中国の企業は自社の製品が人々の日々の生活をどのように楽しくしているかというところを情報として上手に発信している。これは広報の世界です。日本企業はただ製品や技術の優秀さをアピールするのではなく、それが消費者の生活をいかに豊かにすることができるのかということを、広報の手法を使ってもっと情報発信していくべきだと思います。

中国でのコミュニケーションにおける重要点

 LGや、サムスンは上手いんですね。例えばナビゲーションの機能のついた携帯電話のコピーなんかみてみると、「さわやかな5月です。新しいサンシャインに備えて新しいスタートをきりましょう。さあでかけましょう」という非常に上手い表現です。この伝達力、伝え方が上手いんですね。あとトップが出ているんですね。LGなんかの場合ですと北京の支社長が出ていて、もういやというほど出ているんですね。このへんをどんどん発信する姿勢が日本企業よりも上なんだと思います。 杉田 日本企業の場合には、「トップの顔が見えない」とよく言われます。中国にある日本企業のトップで顔の見える人って本当に数えるほどしかいないんです。でも、駐在員の人たちに話を聞くと、「どうやったら私の顔は見えるようになるのかわからない」「言語の問題もあるし、中国人記者のインタビューを受けるのはおっくう」「本社のOKがなければ……」と言うのです。私の会社は、中国で日本企業や中国の国営企業の経営者のためにスポークスパーソン・トレーニングを行って、記者会見やインタビューのための模擬訓練をしています。やはり現地駐在員の方には、こうした基本的なやり方を教えてあげてからでないと、気の毒な気がしますね。

 では、どの企業のビジビリティが高いかといえば、やはりモバイル関係の企業ですね。携帯電話のモトローラ、サムスン、それからヨーロッパ勢ではノキア。こうした企業の広報体制は中国人の間でも認められています。また、車の分野においては、フォードやGMが広報には熱心です。特にフォードは、環境賞を出したり交通安全キャンペーンを行ったりと、中国社会にとって重要な社会貢献活動をしています。やはり顔が見えるようになる一つの方法としては、社会貢献活動に力を入れる必要があるでしょう。

 顔が見えるっていうことについて言いたいのは、顔っていつも経営者とか経営陣のしっかりした人の顔って思われがちなんですが、例えばこの製品を開発した中での開発物語とか開発者の顔とか、そういうのをどんどん出すべきなんですよね。実際にみんながこういうふうに努力をして、こういうふうに女性の開発者がこんな面白いアイデアを出しているんですよとか、そういう話をどんどん伝えたら良いと思うんです。そうすれば顔が見えてくるんだと思うんですよね。

青樹 最後にパネリストの皆様方お一人ずつに、日本企業への提言というのを一言ずついただいて、それで終わりにしたいと思います。

 広報、広報といっても、あるいは他の事もそうなんですが、何が一番重要かといいますと、私はやはり心の問題だと思うんですね。つまり心が伴っていない中国進出は、いつかどこかでバレてしまいます。本心を込めていれば中国語ができなくたって全然問題ではありません。言葉ができるかどうかは、実は表面的な問題であって、最後にうまくいけるかどうかを決めるのはやはり心の問題だと思います。これまで、色んな日本企業を見て、中にはものすごく中国人社員と溶け込んでやっている人がいて、この人は中国で骨を埋めるつもりで頑張っているなぁとすぐわかりますね。そういう人達がどんどん中国社会に出て情報発信をすればいいと思うんですね。そのような日本人が日本企業が増えれば、現場で中国の社員にどんどん好かれて理解されます。そして、中国社会全体にも理解されると思います。

渡辺 私は守りの広報の話からしたいんですが、守りという意味では二つ提案があって、一つは製品力だけでは有事はやっぱり乗り切れない。有事の際っていうのはやはり企業の顔であるとか、あるいはブランド力であるとか、企業そのものの価値とかというもののほうをきちんと訴えて、平時から訴えかけていかないと、やはり有事というのは乗り切れないかなというふうに思いました。そういう意味ではしっかりとした広報体制をトップの近いところにつくることが喫緊の課題だと思います。

杉田 日本企業は広報に対する理解が足りないというお話をしましたが、私は日本企業にただ単にもっとお金を使えと言っているのではないのです。戦時中の古いスローガンに、「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」というのがありましたが、日本企業はコミュニケーション活動において、もっと工夫をする必要があると思います。例えば携帯電話を使ったモバイル・マーケティングでは、中国が世界で一番進んでいます。中国のインターネット・ユーザーの数は一億人を突破していますが、中国で非常に進んでいるのは、こうしたオンライン・メディアを使ったマーケティング・コミュニケーション活動です。

 例えば中国において、ボッドキャスティングといった新しいテクノロジーをどうやって利用していくか。それからブログは、あるいはソーシャル・ネットワークは、ビデオ+ブログのブイログ(vlog)は。RSSのようなインターネット関連の新しいテクノロジーがたくさん出現してきています。今ではまだ多くの人たちに耳新しいかもしれませんが、このように急速に変化しているデジタルの世界において、遅れをとらずにどう新しいテクノロジーを既存のコミュニケーション・システムの中に採り入れていくか。これが非常に大きな問題です。新しいテクノロジーと古い考え方、新しいテクノロジーとこれまでの広報活動をどのように融合させ、よりよい効果的なコミュニケーションにするか。これが中国における日本企業にとって今後の非常に大きな課題の一つだと思います。

嶋原 よく考えてみますと昔は中国側もそんなに開放されていないものですから、自由に話ができなかったんですよね。私が最初の駐在の時は、一対一で中国の人と話し合うということはほとんど不可能でした。今こういう非常にいい時期といいますか、中国の駐在員も含めて中国の人と非常に気軽に話をできる状態になってきています。しかもものすごい勢いで今日本人が中国で働いております。一人一人がそれぞれの地域でコミュニケーションを図っているはずなんですが、かえって色々難しい状況に発展する部分もあると思います。そのへんで結局何がネックになっているかということなんですが、やはり色んな意味で情報の取り方、あるいはアンテナの張り方に色々な工夫が必要なんじゃないかという感じがしております。

 というのは日本は今まで隣国の中国に対して色々な失敗をしてきていますね。中国の実情というのを本当に把握してきたかどうかというのは、過去の歴史から含めて反省しなければならないということです。やはり現地、現物、本当に中国の人と色々コミュニケーションを交わしていく上で、しっかり一辺倒の情報に流されないように情報の取り込みをしなければいかんのではないかというふうに感じております。

 やはり広報マンあるいは広報がこれから色んな意味で中国の人達と折衝をしていく上で、もちろん中国語も勉強してもらいたいです。それくらいやっぱり言葉を通じてコミュニケーションを交わしていって、色んな意味での心の付き合いとか、色んな違いというのを認識しあっていくべきじゃないかと思います。本当に今中国で、中国語を使って中国の社会で日本の立場を説明している人がどれだけいるでしょうか。むしろ逆に中国の人が、日本に来て日本の言葉を使って本を書いたり説明しているほうが圧倒的に多いんじゃないんでしょうかね。そういうところからも、我々はまだ勉強が足りないなということを最近私は感じております。そういった点では先程も申しましたように、広報でぜひ、どんどん中国に赴任していただいて折衝していただくというのが大事だろうと思っております。

青樹 ありがとうございました。中国社会とのコミュニケーションというのは、私個人にとっても色んな思いがございますが、でもこれからコミュニケーションをとっていかないわけにはいきませんので、皆様がんばってどんどん中国とコミュニケーションをとって参りましょう。

●パネリスト 順不同(文中敬称略)
日中投資促進機構 事務局長 嶋原 信治氏
(株)プラップジャパン 取締役副社長 杉田 敏氏
北海道大学 助教授 渡辺 浩平氏
キャストコンサルティング 代表取締役社長 徐 向東氏

●モデレーター
ノンフィクションライター、元中国国際放送 キャスター 青樹 明子氏

お問い合わせサイトマップENGLISH