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ブランド支持状況調査

ブランド支持状況と製品選択行動

 消費者の関心が高いデジタル家電6品目について、消費者のブランド支持状況がその人の製品選択にどのような影響を及ぼしているのかを探った。消費者はどのような理由 で検討対象を選び、購入対象を絞り込んでいるのだろうか。その過程でどのようにブランドスイッチが起きているのだろうか。ブランドスイッチが起こりにくい要因は何だろうか。

評価モデル

 消費者のブランド支持状況を次の3つの視点から評価する。(図1)

表 評価モデル

 第1の視点は、消費者がある製品を買いたいと思い立ってから実際に購入するまでのどの段階で、最終的にその人が選んだメーカーを選択肢に入れているのかである。一般に、 早い段階で選択肢に入るメーカーほどブランド力があると考えられる。消費者が購入したものを選択肢に入れた段階は(1)当初から(買おうと思ったとき)、(2)メーカーを 比較検討するとき、(3)購入直前、の3段階に分けられる。

 第2の視点は、製品の購入理由の中で、ブランドに対する好感がどのような位置付けにあるかである。一般に、選択理由としてブランドの好感度の位置付けが高いメーカーほど ブランド力があると考えられる。ブランドの選択理由がブランド選択プロセスの各段階でどのように異なるのかを、購入したメーカーを選択肢に入れた段階や選択理由によって評価する。

 第3の視点は、ブランドスイッチである。一般に、スイッチされにくいメーカーほどブランド力があると考えられる。ブランドスイッチの起こりにくさが、選択肢に入れた時期や 選択理由によってどのように異なるのかを評価する。

 なお、調査は過去1年間に対象製品を購入した方々に対して、インターネットによるアンケート形式で行った。(調査概要囲み)

購入したメーカーを検討し始めた時期

 製品別に、それぞれの製品を実際に購入した人が、購入したメーカーをどの段階で選択肢に入れたのかを示したのが下の図2である。

表 製品別の購入検討時期

 ノートパソコンでは半数以上の人が最終的に購入したメーカーを最初から選択肢に入れていたことが分かる。インクジェットプリンタでも最初から選択肢に入れていた人が半数近く を占めている。このような結果となった要因の1つとして、これらの製品は買い替え需要が多く、消費者の製品に対する理解が進んでいると考えられること、製品の差別化が比較的難しく、 製品の選択理由の中でメーカーブランドの位置付けが相対的に大きくなっていることが挙げられよう。その結果、比較的早い段階で具体的な選択肢が挙げられる確率が高くなっているので はないかと推測される。

 逆に、薄型テレビやDVDレコーダーでは比較検討段階や購入直前といった遅い段階で実際に購入したメーカーを選択肢に入れている人が多い。これらは歴史の浅い製品でありまだまだ 製品に対する評価は定まっていないところがある。しかも、初めて購入する人が多いため、消費者はどのメーカーのものを選べばよいのかよく分からず、色々と比較検討していくうちに やっと具体的なメーカーが絞られる、というステップを踏むことが多いのではないだろうか。このように、どのブランドが強いかという点に関してはまだ流動的要素が残り、これから次第 に評価が定まっていくものと思われる。

 携帯電話やデジタルカメラは比較的早い段階でその人の購入メーカーが選択肢に入る傾向にあるが、遅い段階で選択肢に入る場合も多い。これらの製品は買い替え需要が多い一方、 新技術あるいは新サービスも次々と導入されていることから、結果として中間的な性格が表れたのではないかと推測される。

検討時期と購入理由

 購入者の購入理由別に、どの段階でその人が最終的に購入したものを選択肢に入れていたのかを示したのが下の図3のグラフである。当企業ブランドに対する好感を購入理由とした 人は最初からそのメーカーの製品を選択肢に入れる傾向が非常に強いことが分かる。次いで、当商品ブランドに対する好感を選択理由に挙げる人にも同様の傾向が見られる。逆に、これ らの選択理由を挙げる人たちは、購買直前になって初めてそのブランドを選択肢に入れることが少ないことが分かる。

表 購入理由別の当該ブランド検討段階

 このように、ブランドに対する好感アップは自社製品を最初から選択肢に入れてもらうための重要なドライバーとなっている。

 一方、デザインや機能、性能を選択理由とする人では比較検討段階で購入ブランドを選択肢に入れる人の割合が多い。また、価格を選択理由とする人では、比較検討段階に加え、 購入直前になって初めて自分が購入したブランドを選択肢に入れる人の割合が多くなっている。このように、購入の遅い段階に行くほど、製品の機能などの理由に加え、価格が選択 理由として次第に重要となっていく様子が分かる。

 サポートを選択理由として掲げる人は早い段階で対象を選ぶ傾向にあり、選択理由としてデザイン、機能、性能、価格を挙げる人よりも、ブランド好感を挙げる人に傾向が類似 している点で注目される。当初から選択肢に入れる人の割合は最も多く、企業ブランドを理由に挙げる人の割合を上回る。知人からの薦めを購入理由に挙げる人は最初から選択肢に 入れた人も多いが比較検討段階で選択肢に入れた人も少なくなく、ブランド好感を購入理由とする人と機能などを購入理由とする人の中間的な位置にある。

 これらの結果を踏まえ、以下の通り考察する。

 購入理由として価格は最も直接的なものであり、単一尺度として製品間の比較可能性が最も高いものである。このような性質を持つものが選択理由となったときには、購買直前 のブランド選択行動を大きく左右する要因となる。

 デザインや機能、性能は、価格ほどではないが、物理的ないしは有形的な基準に基づいて比較がしやすいものであると考えられる。したがって、製品を比較検討する段階での 選択要因となりやすいといえる。また、最初の段階では選択肢に入っていなくても、比較検討の段階で改めて機能などが優れている製品と消費者に認められれば選択肢に入り、その まま最終的に選択される要因となると考えられる。

 ブランドは最も無形的な基準であり、外形的基準に基づく評価が難しいものである。したがって、選択行動における遅い段階ではなかなか決め手となりにくいと考えられる。 逆に、初期段階での購入理由となりやすく、しかもいったん検討対象となれば、後の段階で他のブランドと機能や価格などの面で比較することはあっても、そこで特にマイナス要素が 出ない限りそのまま選ばれる確率が高くなる要因となると考えられる。

 メーカーとして最も売りやすい要因は価格であるが、技術などの裏付けを欠く単なる安売りは基本的に避けるべきものと考えられる。そこで差別化を図ることになるが、多くの メーカーにとって、機能や性能などは最も重要な差別化要因として重点が置かれる部分ではないだろうか。しかし、長期的に見ればブランドは有力な差別化要因であり、特に市場が 成熟化するほどブランドの位置付けは高くなるものと考えられる。

 ユーザーサポートについては、製品によって重要度が異なるが、ある製品についてサポートの重要性を消費者がよく理解するにはそれなりの数のユーザーが利用経験を持つ必要 があると考えられる。したがって、どのメーカーのサポートがよい、という評価が定まるには一定の評価期間を経ることが必要であり、メーカーの立場からは長期的な取り組みを必要 とするものであると考えられる。このようなことから、サポートに対する評価はユーザーの経験に基づくブランドに対する信頼度の1つの目安と考えられる。そのためサポートを購入 理由に挙げる人は、ブランドを購入理由に挙げる人と結果的によく似た選択行動をするものと考えられる。

 知人からの推薦はブランドを補強するという側面と具体的な機能、性能に関する知識を補足するという2つの側面を含むため中間的な位置付けとなったのではないかと考えられる。

検討時期とブランドスイッチ

 購入したメーカーが選択肢に入った時期ごとに、購入までのブランドスイッチの状況を示したのが図4のグラフである。なお、把握のタイミングとして購入直前は除外している。 この結果から、最初から買いたい選択肢に入るブランドは他のブランドにスイッチされにくいことが分かる。したがって、早い時期に選択肢に入りやすいメーカーほどロイヤルティの 高いユーザーを獲得する上で有利なポジションにあるといえる。このように、購入のどの段階で検討対象となるかはメーカーのブランド力を示す1つの目安となるといえよう。

表 当該ブランドの検討段階別のブランドスイッチ

 前述した購入時期と購入理由との関係と併せて見ると、ブランドに対する好感度を高めること、あるいはサポートなど無形のサービスに対する好評価を得ることなどが、早い時期 から消費者の選択肢に入る可能性を高めることにつながると同時に、ブランドスイッチされにくい状況を作り出すことになると考えられる。

購入理由とブランドスイッチ

 購入理由別にブランドスイッチの状況を示したのが図5のグラフである。購入理由として企業ブランドへの好感を挙げた人のうち、ブランドスイッチをしなかった人は、機種は違う が同じメーカーの製品を購入した人まで含めると88.5%を占める。同様に、購入理由として商品ブランドへの好感を挙げた人では92.7%と、大半の人がブランドチェンジをしな い状況が見られる。サポート体制についても同様で、やや割合は小さくなるが86.1%の人がブランドチェンジをしていない。

表 購入理由別のブランドスイッチ状況

 一方、機能や性能で選ぶ人はそれよりブランドチェンジをする割合が高く、価格で選ぶ人はその割合が更に高くなる。

 デザインは、前述の通り比較検討段階で注目されやすい選択理由であり、その点では機能や性能と似ているが、同時にブランドスイッチが起きにくい購入理由であり、こちらの点 ではむしろブランド好感に近い。デザインは物理的性状である一方で、消費者の心理に働きかける要素であり、消費者の欲しいという気持ちを引きつける点でブランドと共通する面が あると考えられる。

 製品別ではノートパソコンが最もブランドスイッチする人が少なかったのだが、購入者の選択理由としては、ブランド(企業、商品)のほか、サポートを挙げる人が多い。製品面 ではCPUやOSなど最も基本的な部分で差別化が困難な一方、サポートに対する信頼を含めブランドが大きな差別化の要因となっている状況がうかがえる。

おわりに

 企業ブランド構築は時間がかかる上、売り上げとの関連性が見えにくいことから、製品の販促活動と比べて重きを置かない企業が多いように感じる。しかし、これまで見てきたよ うに、購買のできるだけ早い段階で消費者の選択肢に入ることは、最終的に選ばれる上で非常に有利なポジションを占めることとなる。そして、そのためには企業および商品のブランド の力が大きく、しかもブランドスイッチを防ぐ主要な要因となる。

 このように、地道にサービス、デザインを向上させる活動を行うとともに、新聞広告などを通じてその内容を継続的に訴求することは、結果的に大きなリターンをもたらすことに なる。企業イメージ形成にはある程度の時間が必要であり、長期的に取り組むことが重要であると考えられる。

(調査概要)
ブランド支持状況調査
調査対象製品:デジタル家電6品目(薄型テレビ、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話、DVDレコーダー、インクジェットプリンタ)
対象者:過去1年間に調査対象製品を購入した方
調査時期:2006年1月
調査方法:インターネット調査
サンプル数:500
日本ブランド戦略研究所
代表取締役
榛沢明浩
東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレイトディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマツコンサルティング(現 アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。主な著書に『知的資本とキャッシュフロー経営』(生産性出版)、『図解ブランドマネジメント』(東洋経 済)などがある。

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