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「採用ブランディングの実践」
優秀な人材の確保と企業ブランディング

日本経済に明るさが増す中、採用戦線は活発化し、採用側の買い手市場から就職側の売り手市場へと変化を見せている。企業のブランド戦略においても採用活動に対してのアプローチが重視されるようになった。企業は優秀な人材を確保するという視点から、魅力ある企業ブランドの構築が急務となってきている。
こうした動きをテーマに7月18日、日経コーポレートブランドセミナー「採用ブランディングの実践」(共催・日経広告研究所・日本経済新聞社広告局)が開催された。今回はその中からパネルディスカッションの内容を一部紹介する。

「花鳥風月」はもう古い、プラスアルファと女性へのアプローチが重要

司会 本日はリクルーティング、ブランディング、そしてマーケティングの見地から、意見を交換していただきたいと思います。まず、採用コンサルティングのお立場からワイキューブの安田社長に採用前線の近況をお話しいただきたいと思います。

安田 最近の学生が企業に求める要素や条件は変わってきています。以前であれば、給料を中心とする待遇や労働条件が何より重視されましたが、現在は「プラスアルファ」が重要です。待遇が良い、労働環境が良いのは当然必要な条件ですが、それだけでは優秀な人材は集まらない。今はインターネットでの情報交換が就職活動生の常識なので、実際にその企業で働く社員よりも企業内の情報を知っている学生がいたりします。企業が採用情報として広報している内容以外の情報も学生は知っているわけですから、単純に知名度が高ければ人気が出るとも限らない。「知名度はあるけれど、就職したくない」という現象まで起きています。優秀な人材を採れる企業とそうでない企業の二極化が顕著になっている今、企業は、学生たちが「この会社に就職すればこんなプラスアルファがある」と期待を持てるように企業自体を変革しなければなりません。
 変革のポイントは3つです。1つはやはり給料や休日日数、福利厚生などの待遇を良くすること。そして2つ目は、社員が成長していくためのプログラムや実力を適性に評価する人事制度と、社風や人間関係が良いなどの労働環境の整備。これにはオフィス環境も含まれます。そして最後が「仕事のやりがい」。ただ、社会へ出ていない学生たちにとって「やりがい」というものは明確ではありません。なので、企業のトップつまり社長のビジョンが自分の人生をかけるに値するものであるかどうかを見極めようとします。この会社は何をするために存在するのか、社員は何のために働いているのか、そこに「やりがい」を見出すわけです。だからこそ、トップはこのような問いに、明確に答えられなければなりません。
 また、今後採用ブランディングを進めていくうえで外せないのは、女子学生に「ここで働きたい」と思ってもらうことです。世の中の風評のほとんどは女性が作るもので、その口コミの速度も範囲も男性の比ではありません。男子学生の会社選びの基準は損得ですが、女子学生は好き嫌い。つまり、男子学生はデータで、そして女子学生はムードで企業を選ぶのです。そして女性に人気のある企業には、必ず優秀な男性が集まってくる。「女性に好かれる企業作り」というのはブランディング活動の中で盲点なのではないでしょうか。

司会 ご指摘の通り、ブランディング論の中では女性を意識した視点や意見はまだ少ないように感じます。では、ブランド・マネジメントやマーケティングの観点から採用を見た場合、現在の日本企業はどのような状況にあるのでしょうか。阿久津先生よりご意見を伺いたいと思います。

阿久津 日本企業のブランド力を測定する「ブランド・ジャパン」(実施:日経BPコンサルティング)の2006年版を見ると、「人材力に優れたイメージを持つブランド」として、トヨタ自動車、本田技研工業、松下電器産業、松下電工、ソニー、オリエンタルランド、リクルート、島津製作所、帝国ホテル、キヤノンらが上位を占めています。トヨタ自動車や本田技研工業、松下電器産業、松下電工、ソニー、キヤノンなどは総合力でも上位に位置するブランドですが、オリエンタルランド、リクルート、島津製作所、帝国ホテルなどは、人材力の強さがブランド全体を牽引しているということが言えます。
 採用に関するデータをさらに見てみると「一度この企業で働いてみたい」という区分ではテレビ局や航空会社などの人気が高く、「人材育成に力を入れている」には、マクドナルド、ダスキン、ベネッセ、スターバックス コーヒーといった顔ぶれが登場し、「従業員を大切にしている」というイメージがあるのは、ホテルオークラ、 島屋、ニッポン放送、ヤクルトなどです。トヨタ自動車や本田技研工業、ソニーといったビッグブランドは、やはりどの区分においても上位に位置し、専門分野に特化していない学部の学生には人気があります。
 現場でご活躍される安田社長のお話を伺い、採用面の活動はブランディングの重要な側面であるということを強く感じました。また、フィーリングを重視する女性に好かれる企業作りが重要だという点は、何も浮き足だった話ではなく、マーケティングの世界でも取り入れられつつある脳科学的なアプローチの研究が指摘する、意志決定における情緒や情動の重要性と一貫する指摘です。総合的にイメージが良い企業が採用においても有利である一方、人材の採用・育成に力を入れることが効果的なブランディングになっていると思います。企業ブランド構築活動の1つのコアとして、採用ブランディングには力を入れていくべきでしょう。

司会 大企業のパートナーとしてご活躍される電通の齋藤さんには、採用ブランディングの活動内容や課題についてお聞かせいただきたいと思います。

齋藤 優秀な学生を採用したいと考える企業は、ブランディング戦略をもっと採用とリンクしたものにすべきだと感じています。大学側の人材育成や就職支援は進化し、大学院は研究者への道という役割だけではなく、スペシャリスト養成機関としてそのカテゴリーを多様化しています。そして今や、文系の学生たちまで大学院を経て就職に臨むようになりました。つまり、今の優秀な学生たちは、専門意識を持って就職戦線に臨んでいるのです。インターンシップにも積極的に参加するようになり、大学側が、実際に企業の現場とコラボレートするプロジェクト型インターンシップを推進する体制まで整えています。また、最近では高校生の段階から総合教育の授業で、将来どのように社会と関わるか、どのようなポジションにいくべきかといったキャリア・プランニングをさせるケースもあります。
 このように学生を取り巻く環境が変化する中、企業はコンタクトポイント全体を見直していく必要があります。専門意識を生かせる限定された数社の中で比較検討する学生たちに対し、企業は自社のメッセージを明確に伝えなければなりません。
 現在と同じように就職戦線が売り手市場であったバブル崩壊直前の時代、「花鳥風月」というキーワードがありました。「花形企業であること」「長期休暇がとれること」「社風が良い」「月給が良い」という企業に人気が集中した状況を言ったものです。現在はどうでしょうか。やはりそれぞれにプラスアルファの要素がなければ学生を引きつける魅力にはなり得ません。たとえば、花形企業には伝統的な大組織というイメージがあり、安定志向の学生ばかりが集まってしまう傾向があります。これを回避するには、企業ブランド戦略の範疇でイノベーティブ・カンパニーとしての躍動感を伝えなければなりません。同じように、休暇や給与面での優位性のアピールに加え、CSR活動などの紹介も必須になってきています。また、社風に関しては、スペシャリスト採用や人材育成方針などをできるだけ具体的な情報として発信していくべきでしょう。このような採用を意識した活動は、必ず企業ブランディング全体を強化していくはずです。

「良い企業」を「良さそうな企業」に見せる工夫が重要

司会 企業イメージなどの調査ランキングは、学生と社会人でその内容がかなり異なってきます。安田社長はそれぞれが持つ視点の違いは何だとお感じになられますか。

安田 1番の違いは、働いたことがあるかないかです。社会人は実際に働く人として「良い企業」を選びますが、学生は働いたことがないので「良さそうな企業」を選ぶわけです。本当の意味での良い企業は社会人に選ばれた企業なのでしょうが、社会人に人気があって学生に人気がないということは、良い企業なのに良さそうに見えていないということです。採用で考えると、良い企業であり、かつ良さそうに見える企業でなければ優秀な人材は採用できないということです。

司会 「良い企業」を「良さそうな企業」に見せるというのは、簡単なようで非常に難しいことだと思います。良さそうに見えない「良い企業」のコミュニケーションには何が不足しているのでしょうか。

齋藤 「良い企業」が「良さそうな企業」に見えていない場合の多くが、企業活動や社内の活気などを伝える回路はあっても、統一された情報として社外に発信できていない点にあります。OB訪問なども企業イメージ形成の1つの機会だと考えれば、全体的なブランディング活動の文脈の中で、目標人材像、募集方針などを決定し、全ての従業員が共通の意識を持って活動できる基盤を確立するべきでしょう。

司会 社会人と学生の違いのように、学部生と大学院生では就職先としての企業の見方が異なるのでしょうか。

阿久津 学部生の多くは大手一流企業を目指す傾向にありますが、大学院生は自分のこれまでの実務経験やMBAで学んだ専門的知識を生かそうとするため、比較的規模に関係なくさまざまな企業へと就職していきます。私が教えるMBAの学生に対しては企業側も即戦力として採用する傾向があるようです。ただ、学部生へ向けて行うような説明会などはまだ大学院生に対して少なく、採用側の企業としてはそこに機会があるような気がします。

司会 では最後に、今後の採用ブランディングへ向けて一言ずつお願いします。

齋藤 繰り返しになりますが、これまで独立していた採用のためのコミュニケーションを企業ブランディングの一環として構築する必要があります。採用へ向けたメッセージはブランドのコアメッセージから派生したものである、という構造が社内で確立すれば、常に望ましい人材が集まってくるシステムができるはずです。

阿久津 欲しい人材を効果的に採用するためにも、彼らにとって差別化された魅力的なブランドの構築を目指すべきでしょう。一方、大学側も学生たちの就職支援を進めていく中で、学部生や大学院生たちが望む企業に対して、強くアピールできるようなブランディングを勧めていきたいと思います。

安田 ポイントは2つ。まず、言葉で伝えないことです。「我が社は良い会社です」と言われてもそうは思わないですから、良い会社だと感じてもらえるようにする。それから、全ての学生に好かれようとしないこと。誰にでも好かれようとすると個性がなくなってしまいますし、自社を強烈に好きになってくれる学生が、採用ブランドを作ってくれるのです。また、優秀な人材を集めるためには、まず今の社員の待遇改善から始めるべきです。

司会 本日は貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

●パネリスト 順不同(文中敬称略)
(株)ワイキューブ 代表取締役 安田 佳生氏
一橋大学大学院国際企業戦略研究科 助教授 阿久津 聡氏
(株)電通 IMCプランニング・センター ブランド・コンサルティング室
チーフ・コンサルタント 齋藤淳一氏

(司会)日本経済新聞社東京本社広告局業務推進部次長 横田浩一

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