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ブランドフォーラム
企業ブランドづくりの新潮流

「ブランドフォーラム企業ブランドづくりの新潮流」が7月31日、名古屋市内で開催された。中部地区の自動車関連企業に対するマーケティングサービスで豊富な実績を誇るデルフィスと、様々な企業のブランド構築をグローバルに展開するオグルヴィ&メイザーの日本法人が立ち上げたブランドフォーラム委員会の主催によるもので、今回は2回目。先進企業のブランディングの取り組みを紹介、その意義を探った。

「ご挨拶」

企業間の差別化がますます難しくなり、商品やサービスを選択する主導権が情報に敏感な賢い消費者に移りつつあります。また、人口減少が叫ばれるにつれ、優秀な社員を採用・維持することが難しくなってきました。こうした中、企業ブランドという無形の資産が持つ多様な力に注目が集まっています。

企業ブランドは、市場に出回る商品・サービスの中から自社製品を選んでもらうための有効な手段であり、商品やサービスの購入者に大きな満足感や夢をも与えることができるものです。さらに最近では、社員に対するコミュニケーション手段、意識の統一体としても重視されてきています。

そこで、今回は「企業ブランドづくりの新潮流」と題して、革新的かつ独創的なブランド展開を行う企業の試みを取り上げます。先進企業でブランド管理を担っている責任者の方に加え、専門家の立場から企業ブランディングに携わる方にその最前線の動きを現在進行形の形で解説していただきます。

ブランドフォーラム委員会 委員長 今井 彰氏

「レクサスのブランドづくり戦略」

コンセプトを固めるために膨大な作業を費やす

社会・経済の構造が大きく変化し、所得の二極化やこだわり消費が叫ばれる中、自動車市場も大きく変化しています。トヨタも10年後、20年後を考えたときに、果たしてこれまでのような業績を上げられるかという大きな命題にぶつかりました。そこで、課題が大きくなる前に手を打つべきと考え、レクサスの導入に踏み切りました。

次に考えなければならないのが、レクサスという新ブランドをどういったイメージに育てていくかです。一度つくったブランドイメージは安易に変えられるものではありません。未来にわたって長くこだわり続けるイメージとして「常に高級の本質を追求するブランド」に決定しました。具体的には、「最高の商品を最高のサービスで提供する」というものです。

最高の商品づくりということでは、レクサスセンターという開発部門を新設しました。実験、評価から始まり、設計まで他の車種とは完全に分離独立させました。また、生産工程でも田原工場や九州工場などに特別な専用ラインを設けて生産しています。一方、最高の販売サービスという点でも、自動車ディーラーという枠を超えて高級ホテルやデパートなどのホスピタリティーをお手本に最高のおもてなしを追求しました。

われわれが「最高」にこだわるには理由があります。お客様に満足を越えて感動してもらうことこそが、ブランドビジネスには不可欠だと考えるからです。お客様に感動してもらえれば、繰り返し利用してもらえ、ロイヤルティーも高くなります。特にレクサスのように、販売台数がある程度限られるマーケットでは、一度ご購入いただいた方にはファンになってもらい、長いおつきあいをさせていただくことが重要です。

そのために必要なことは三つのポイントに絞られます。第一は人づくり。第二は、車を売る店舗およびサービス拠点づくり。第三は、お客様に対して接するおもてなし。中でも、ブランドづくりは人づくりと肝に銘じて取り組んでいます。その一環として、富士レクサスカレッジではこれまで全国の2000名以上のスタッフを研修してきました。

昨年8月末の立ち上げから今年6月までのレクサスの販売実績は、月平均2000台ペースで推移しています。基幹車種「LS」を欠く中での出足としてはまずまずでしょう。ただ、重要なのは販売台数ではなく、お客様からどういうイメージで受け入れていただいたか、どれだけ満足していただいているか、そしてレクサスに携わる全スタッフが自信を持ってブランドづくりに取り組んでいるかだと考えています。

トヨタ自動車 常務役員 横井 靖彦氏

「村田製作所の企業ブランド戦略」

当社が企業ブランド構築に取り組み始めたのは1991年からです。以後、知名度や認知度を含む企業ブランドを飛躍的に向上させることに成功しましたが、BtoB企業故に一般消費財が無いこと、媒体は専門誌紙に限られること、広告予算が少ないことなどが常に足かせとなってきました。そこで、われわれは一歩ずつステップを踏み、その段階ごとに作戦を変えてブランド構築に取り組んできました。

ブランド戦略三つのポイント

その結果、今日では各種企業ランキングでもかなり高い評価を得られるまでになった要因として、三つのポイントを挙げることができます。第一に、経営トップの決意が極めてはっきりしていたこと。とにかく村田製作所を有名にして多様な人材確保に結び付けたいという、危機感に基づいた決意があったのです。これが安定的な広告展開にもつながりました。

第二に、広報・広告の方法として選択と集中を徹底したこと。まず訴求対象は、就職活動開始間近の学生に絞り込みました。次に訴求内容も、村田製作所という社名、エレクトロニクス業界に属していること、そしてメーカーであることの三点に絞りました。BtoB企業の宿命として一般消費財を持たないが故に、社名すら全然知られていないのが実情でしたので饒舌を避け訴求点を絞り込みました。

利用媒体も、日本経済新聞と主要テレビ局のスポットに集中させました。しかも、テレビの広告と印刷媒体の広告は同じテーマ・同じ内容で展開したほか、広報との連動を心がけました。さらに訴求地域も大都市圏、中でも当社の地名度の低い関東圏に集中させ、訴求時期も短期集中を徹底させました。

第三に、基幹となる広告制作スタッフが安定していたこと。いま現在も主要スタッフはスタート時から変わっていません。制作スタッフが同じであれば、自ずと企業理念・特性への理解は深くなりますし、中長期的な広告展開を意識した広告づくりが可能になります。

BtoB企業がブランドを構築する意義を疑問視する向きもありますが、優れた人材を確保することは将来の発展の礎です。会社自体を売ることも大切なことです。今後の広告展開は、拡大する中国市場や関東・関西以外の地域での知名度を上げること、子供たちに向けてエレクトロニクスの面白さと村田製作所のかかわりを伝えることにも努めていきます。最後に、広告はあくまでも広報の一つであって、実態以上のことは言えば信頼を失うことを肝に銘じています。

村田製作所 企画・管理グループ 広報部部長 大島 幸男氏

「企業ブランド構築の戦略課題」

重要性増す「ブランド」

企業ブランドは今日、ヒト、モノ、カネ、情報に続く第五の企業資産とも評されます。インターネットで何でも自由に買うことができる現在では、消費者はブランドで商品を選ぶ傾向を強めており、競争力のあるブランドは重要性を増しています。

限られた情報しか持たない学生にとっては、信頼ある企業ブランドは会社選択の重要な要素となっており、リクルートの面でも大きな意味を持ちます。さらに、従業員に会社の方向性を認識させるためにもブランドの活用は有効です。

ブランドを一言でいうと、知識すなわち一貫したまとまりのある情報ということができます。つまり、どのようなブランド知識を消費者のアタマの中に形成するかが重要なのです。特に企業ブランドの場合は、「意図」「能力」「行動パターン」が連想されるようにすることが必要です。

強い企業ブランドを構築するために

「意図」とは会社の意思、方針です。1990年代末、IBMは「e-business」というスローガンを使い、インターネットによって顧客の問題を解決するソリューション企業になるという意思を会社の内外にはっきりと示しました。

「能力」は得意分野です。烏龍茶で成功したサントリーは、緑茶市場に参入した当初はうまくいきませんでした。烏龍茶の成功が裏目となって、緑茶を作るのは上手な企業ではないという連想を与えてしまったからです。しかし、その経験を生かし、今では「伊右衛門」をヒットさせることに成功しています。

「行動パターン」とは、この会社はこういうことが起きたときにはこういう行動をとる企業であると認識させることです。松下電器産業は石油ファンヒーター事故の際、製品回収を徹底し、そのためには広告費を惜しみませんでした。これで同社は、自らの責任を自覚し、行動する企業であるという知覚を定着させました。

強い企業ブランドを構築するためには、以上の三つの要素がブランド知識として形成されるよう、広告などのコミュニケーションや実際の行動を戦略的にマネジメントしていくことが必要でしょう。

法政大学 経営学部教授 田中 洋氏

「結果を残すアカウントプランニング ローカルインサイトに基づいた360°グローバルブランドキャンペーン」

「インサイトに基づいたブランドの表現」を考える

オグルヴィ&メイザーは米国に本社を置き、全世界に497のオフィスを持つ広告代理店です。日本支社は1995年に設立しました。私の肩書であるアカウントプランナーの主な仕事とは、ブランドのコミュニケーション戦略を考えること、そのためにそのブランドに対して消費者が持つ意識(コンシューマーインサイト)を発掘することです。

日本独自のブランディングを展開

多国籍企業の場合、欧米で制作した広告に日本語のナレーションをつけて流すのが一般的です。しかし、私が担当したジレット社のヴィーナスという女性用シェーバーのブランドでは、ライバル商品対策などの理由から日本独自のブランディングを展開しました。

まず、日本人女性のシェービングに対する意識を調べてみると、嫌なものを取り除くというネガティブなものであることが分かりました。しかし、露出度の高い服装をする女性が増えている現状を見ると、シェービングをお化粧やスキンケアと同じ習慣に変えられると考えました。そして意識改革ができれば、ヴィーナスに対する支持を得られるだろうと考えたのです。

キャンペーンのすべての場面で体現されるコアとなる考え(これを弊社では360°アイデアと呼びます)を「ヴィーナス・オーラを解き放て」に設定しました。CM制作者には、シェーバーの機能のみを訴求するのではなく、女性が女っぷりを上げていると感じながら剃っている気持ちを表現してもらいました。

シェーバーブランドでは先例のないことでしたが、カフェでのキャンペーンも実施し、実際にシェービングも体験していただきました。シェーバーには、CM出演の歌手がデザインしたボディージュエルをつけて、スキンケアであることをアピールしました。

このように統一感のあるキャンペーンの下、ヴィーナスがビューティーブランドのように振る舞うことで、消費者の意識の変化に成功し、大差をつけてシェア首位を奪還するという結果を残すことができました。

オグルヴィ&メイザー・ジャパン
シニアアカウントプランナー マクウィリアムズ・はる奈氏

※以上は、8月30日付 日本経済新聞夕刊名古屋支社版の掲載記事に加筆、修正を加えたものです。

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