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21世紀のマーケティング・イノベーション~課題と展望~

7月24日(月)、日本マーケティング協会で「マーケティングジャーナル」の創刊100号記念セミナーが開催された。
そのプログラムのひとつとしてパネルディスカッション「21世紀のマーケティング・イノベーション:課題と展望」が行われた。

マーケティング・イノベーションの動向と可能性

竹内 コーディネーターをつとめます一橋大学の竹内です。パネリストの皆さんには、まずマーケティング・イノベーションをご自由に語っていただこうと思います。

青木 今日は「トランジション」という概念をキーワードに21世紀のマーケティング・イノベーションの課題を3つほど話させていただきます。
 1つは、競争の次元。マーケティングを進めていく上で、見える次元と見えない次元があります。一橋大学の米倉先生が書かれていますが、ブランドは無形の資産であって、それが資産的な価値とか競争につながっていくというのは、実は見えざる競争次元をブランドという形でいかに見える形にしていくか、あるいは見える競争の次元の背景としてフィロソフィーであったり、価値観をどう結びつけるか、という話です。
 2番目に経験価値です。単に何かを経験したという価値ではなく、それをベースにして経験自体、または自分自身、自分の生活を、一皮むけたものにしていく話です。商品の価値よりもそれを使う、あるいはそのことによって生活あるいはその人自体のトランスフォーメーション、トランジションで生活や、自分自身が変わるというイノベーションの切り口が必要になってくるのではないか。
  3番目は社会全体のトランジション、節目の問題です。人口学の分野では人口転換という概念があります。出生率の低下、少子高齢化など、今さまざまな社会問題を抱えている。日本は高齢化が進んでいますが、ある意味で総中流社会から総中年社会へと入ってきて、一人ひとりの人生の節目、社会全体の節目が変わってきた。生活が大きく変わり、消費が変わるという状況になってきている。購買行動を詳しく調べていくと、ほとんどイノベーションになっています。生活のあり方、消費のあり方が変わっていく中で、もう少し商品のあり方や社会生活のあり方をもう1回考える。それが近代イノベーションの1つの出発点であるのかなと思います。

上田 イノベーションには2種類あるという気がします。1つは技術、ツール主導の革新。もう1つはアイデアとか概念の革新が主導するタイプ。どちらが主導であっても、最終的には両者の革新があって初めてイノベーションが生まれると思います。そこで私が話すのは料金設定のイノベーション。これはアイデア、概念の革新主導型です。どこが革新なのかというと、支払いのWTP(Willingness To Pay)だけではだめで、顧客との関係性を重視したものでなければならないという点で、そういう事例がいくつか見え始めています。
 価格破壊が起こると、あらゆる企業が疲弊します。その反省から付加価値を高めて、釣り合った価格をいかに消費者に支払っていただくかという動きが活発化しているのです。メーカーだけではなく、量販店もできるだけ安売りをしないで、価値のある価格で利益を上げようとしています。WTPを改善するだけではなく、いかに支払いという点で関係性を強化できるかが重要です。

守口 10年後のマーケティングを考えようという話が事前にありましたが逆に10年前はどうだったのか、そこから10年後の姿を考えてみたい。1996年は、初めてインターネット広告の代理店が日本に誕生した年でした。ヤフージャパンが設立されたのも1996年。それから1995年にアマゾンがアメリカで利用開始。日本では楽天が1997年に設立。1996年ごろはインターネットが一般的になり、消費者が入ってきた時代だったと振り返ることができると思います。1996年がウェブ1.0の始まりだったと言われています。今それが第2世代ウェブ2.0に入っている。これから10年後というのは加速度的に進展して間違いなく次のフェーズに入っていると思います。
  そういう時代のマーケティングを考えると、1つのキーワードは統合、インテグレーションだと思います。例えば企業から情報をインターネットを通じて提供、あるいは広告を出稿する。もしくはダイレクトメールのような形で個別に提供したり、消費者から企業に問い合わせたり、苦情、キャンペーンの応募を行う。または決済を行う、それからデジタル商品であれば流通チャンネルの役割も果たす、いろんな機能が統合されてくるわけです。
 そういった状況でどういう企業がいちばん強いのか、と考えると、顧客リレーション機能を持つ事業者が、マーケティングの中心的プレーヤーになっていくと考えます。一般消費者に対して考えると、姿としていちばん近いのはアマゾンかなという気はしています。アマゾンは、書籍やCDだけではなく、家電やエレクトロニクス、スポーツ用品、健康器具だとか、品ぞろえの幅を広げている。そこでカスタマーリレーションのところを一元化して束ねて、スポークメリットを働かせていく。そんなような姿がもしかしたら10年後を待たずして出てくることも考えられると思います。

丸岡 世の中がいろいろ変化や進化をしていき、技術革新が激しい中でイノベーションを企業として起こしていくためには何が必要なのか。皆さん、イノベーションを起こすことは是非必要という意見ですから、それを起こすために求められるものについて少しお話しします。結論はシンプルで、プレゼンテーションの力をわれわれは磨かないといけない。
  理由は3つあります。まず、そもそもイノベーションというのは、その個人や社会にとって新しいことだとすれば、われわれはこういうことができる、こういうビジョンがある、こういう理念があるということをマーケットに伝える必要がある。これはBtoBであれBtoCであれ、まずこの力がないと何のことだかわからない。
 2つ目の理由は、この時代のイノベーションを起こすには、1つの会社、1つの組織ではなくて、コラボレーション、パートナーが必要です。コラボレーションとかパートナーを得ていこうとすれば、自分は何をしようとしているのか、どういうことを実現したいと思っているのか、何が提供できるのかプレゼンテーションできないとイノベーションが起こせない。もしかしたら起こせたかもしれないイノベーションも起こせないのではないかと思います。3つ目は私自身が実際に感じていることで、グローバル化の中でプレゼンテーション力というのは非常に重要だと思っております。例えば英国の企業と協業しようと話をはじめると、そもそもコンテクストが違う、言語が違う、文化が違う、なかなか話が進まない。グローバル化という中ではプレゼンテーションの力が非常に重要になってくるのではないかということです。

イノベーションと日本企業のスピード感

守口 グローバルで見ると、店舗を持つ小売業の場合は、例えば日本にカルフールが出てきて撤退したり、ウォルマートが出てきても必ずしもうまくいっていない。有店舗の場合は難しい問題がたくさんあると思います。むしろアマゾンなどのインターネットを媒介にして展開、あるいはメディアとして広がっていく企業が国際的には展開しやすいし、10年後に非常にグローバルな企業になっている可能性があると思います。

青木 何をもってグローバル企業か。規模なのか、収益なのか、いろいろ考えがあると思います。例えばアスクルが価値創造企業とおっしゃっていますが、創造する価値が非常にユニークで、それが輝いていればグローバルな企業になりうると思います。非常に事細かに顧客が持っている課題を解決していこうという発想や、細やかな対応は他国の企業にできるのかどうか。そのエッジを効かせていくことによって、技術であったりインフラの部分は模倣されるにしても、その部分で勝ち抜いていく可能性はあると思います。

竹内 グローバルでいえば、グーグルは誕生してわずか6年で、グーグル自体がメディアになっているのではないか、媒体を塗り替えたのではないかと言われています。ITの世界の時間軸がメーカーの考えている時間軸の10倍くらいの速さで動いている。このあたりの世の中の動きの早さという観点で21世紀はどうか。変化とビジョン、それは絶対にマーケットありきだという視点ですが、いかがですか。

丸岡 われわれ日本をマーケットとしている企業にとって一見不利だと思われる客観条件が、場合によって有利に展開することがいくらでもあります。なぜ日本でファクスが発達したかというと、タイプライターが普及していなかったことも原因の1つと思います。手書きのものを遠隔地に送ろうとするとファクシミリは非常に有用。アルファベット26文字の地域よりも、むしろ有利だった。一見不利だと思われることが有利に働くということは視点の置き方かと思います。
 もう1つは、生き残っている日本企業は保守的ではないというのが私の印象です。わたしの知っている企業は、何度も危機を迎えて、その都度それを克服したり脱皮したりして未来に向かっている。例えば「執行役員制度」もイノベーションでしょう。数年前に起こったイノベーションですが、今は多くの企業が導入している。会計の仕方も変わってきています。国の制度にしろ起業のやり方にしろ、日本企業なりわれわれは、決してゆっくりやっているわけではないと思います。
 また、中国の方と話をしていたら、日本企業は意思決定が遅い。私は今この場で決められるが、あなたはどうですかと言われて、「社に戻って検討します」と私は答えました。当社は100年以上の歴史になりますが、逆に言えば100年間このやり方でやってきたわけですから、これはむしろ変えない、よく考えてから判断するほうが賢いのかもしれないと思います。

青木 同種の意見です。スピードが確かに競争の優位性になるというのはあるでしょうが、それを得意とする企業、得意とする国があって、競争を考えていく上でスピードが必要なのかが1つの大きなポイント。急速に成長した企業は、急速に衰退するかもしれない。スピードが絶対にいいとは言いきれないと思う。そうではない価値観があって、速く走れる人は100メートル競争で速く走る競争をしてほしいし、そうでなければ競歩という競技があるわけです。勝てる競争をしていくと勝ち目はあるのかなと思います。

上田 スピード社会で2点。1つは自分のフィールドで言いますと、やはり料金の仕組みがだんだん変わっていくと思います。支払い方式は成果報酬方式になっていくでしょう。それから非常にスピードが速い社会に対応できる体質というのは、どのくらい消費者のそばにいるか、消費者のニーズがどうかをうまく見抜く企業であれば問題はないはずです。

10年後のマーケティング・イノベーション展望

竹内 ノーガッツ、ノーグローリー。勇気なきところに栄光なし。リスクをとって進むことが求められているのかもしれない。

丸岡 なぜできないのかではなく、どうすればできるかを考えろといつも言われております。そういう精神でやっていけばイノベーションも可能ではないかと思っております。

守口 サッカーのマーケットも非常にグローバル化してきて、ヨーロッパの巨大リーグにいろいろな国の選手が集まってきたけれども、ワールドカップでは、ほとんど決まった国しか優勝できない。その国の特色のあるサッカーをやっているチームがやはり強い。ビジネスの世界もグローバル化していますが、やはりその国の特徴ですね。特色を生かせるビジネスの仕方、マーケティングの仕方があるはずです。日本企業、あるいは日本企業のマーケティングは、どういう特色を持っているかを考えながらやっていくことが、日本発のイノベーションにつながると思います。

上田 いかに消費者のそばにいられるかということで、潜在意識・無意識の世界をつかまえられるか。ここが非常に重要ではないかという気がします。古くてもう消え去ったものに新しいテクノロジーを加えることによって、イノベーションはこれからもどんどん生まれるだろうという気がします。

青木 何のためにイノベーションを使うのか。マーケティング主導であれば、マーケットや社会がどう変わっていくのか考えるべき。日本のマーケットは高齢化や少子化が猛スピードで進んでいる。その足元を見て、社会やマーケットを眺める中でどういうマーケティングが必要なのか、そこにどんな技術が使えるのかという発想も必要です。そこから何か新しいイノベーションが生まれると思います。

竹内 カスタマーがいちばん変化している。われわれのマーケティングは変化に対していちばん敏感に反応する世界です。マーケティングは常にアンチテーゼでなくてはいけない。そういう意味でマーケティングのイノベーションは飛躍的に変化を起こせる、そこから日本の突拍子もないマーケットを世界に売り出すことができる。私もこれから10年先を見届けたいと思います。ありがとうございました。

●パネリスト 順不同(文中敬称略)
学習院大学 経済学部 教授 青木幸弘氏
学習院大学 経済学部 教授 上田隆穂氏
早稲田大学 商学学術院 教授 守口 剛氏
電通 MPマネジメント局 次長 丸岡吉人氏

●コーディネーター
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授 竹内弘高氏

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