音声ブラウザ専用。こちらより本文へ移動可能です。クリック。

NIKKEI

NIKKEI AD Web

広告申し込みに関するお問い合わせはこちら

English Page


CB Valuatorとは?
ブランド価値ランキング
日経企業イメージ調査
実践コーポレートブランド
日経ブランディング

実践コーポレートブランド

コーポレートブランディング格闘記~BtoBブランディングの実践ストーリー

 日本経済新聞社と日経広告研究所は、約2年にわたってBtoBブランド研究会を実施しましたが、その結果の一部を単行本として出版しました。この本は神戸大学大学院教授である石井淳蔵氏との共著で、小説風のストーリーに挑戦しています。本稿ではその内容の一部をご紹介します。

 ブランド本は、翻訳書も含め日本語のものだけでも優に500冊を超えます。このブームは、1990年代後半から一気に噴き出しました。本書も、そうしたブランド本の一つです。ですが、ほかにはない工夫があります。
  一つは、BtoB(生産財)企業のブランドを扱っている点です。ブランドというと、欧米の高級ブランドをまず思い浮かべます。「ほかには?」と聞くと、コカ・コーラやソニーの名前が、あるいはブランドの理屈に少し詳しい人なら、ブランドマネジメントを成長の核とするP&Gやネスレの名前が挙がってきそうです。いずれも消費財企業です。
  しかし、ここで取り上げるのは、BtoB企業です。BtoB企業といっても多種多様。エンジニアリング会社や情報システム会社のように取扱商品が数億円、数10億円するような会社もあれば、1円、1銭の単位で取引交渉を行う小さい部品を扱う会社もあります。共通するのは、直接消費者に向けて売るのではなく、「企業相手に、主として生産のための商品」を売っている点です。もっとも、一般消費者に販売していても、生産財に含めてもおかしくない商品もあります。たとえば、屋根瓦や外壁や風呂のバスタブなど住宅部材や、オフィスで使う文房具などは消費者相手ですが、ここではそれらも生産財の中に入れて考えています。いずれにしろ、ブランド論議が華やかな消費市場とはかなり無縁の企業群です。書店の棚を見回しても、生産財のブランディングについて書かれた書物は、あまりないのではないでしょうか。
  もっとも、「本がないのも当然、そもそも生産財企業にブランドなどつくる必要も、考える必要もない」と、すぐさま反論が出てきそうです。しかし、そうではないと考えます。その理由は本書の中でいろいろと議論していますので、そこを読んでもらえればよいのですが、ひとまずはみなさんのお手元にある雑誌や新聞、あるいはテレビの前に座ってコマーシャルを見てもらえるとわかります。事務機メーカーやエンジニアリングメーカーをはじめとして、いろいろの生産財メーカー・商社が、個々の商品を宣伝するというよりも、自分たちの存在をアピールするために多額の広告出稿を行っています。
  こんな話をせずとも、そもそも、あまたある本の中からこの本を手にとられるということ自体、「何とかブランドをつくらないと、我が社も立ちゆかなくなるのでは」と不安を抱えているからですよね。蛇に足を付けてしまいました。

「ブランドを実践する人」のための書

 本書のもう一つの工夫は、解説的教科書風の体裁をとっていない点です。私から見て、ブランドを扱った優れた教科書は(本の中でも紹介しましたが)たくさんあります。生産財企業のブランド構築を考えるうえで、十分以上の知識がこれまでのブランド書には書かれています。しかし、それはあくまでブランドを勉強する人のための書であって、ブランドを実践する人のための書ではありません。
  ブランドを実践する人のための書。それが本書の目指すところです。そのために、冒険ですが、小説・脚本仕立てにしました。舞台は、産業用部品を生産する吉村電工。主人公は、経営企画部の村上タカシくん。そして、その周りには、上司である経営企画部長と新社長、そしてブランド構築をめぐって激論を交わすことになる、営業、工場、研究、財務、広報などの論客の面々が登場します。
 「ブランドとは何か」、「我が社に本当にブランドは必要なのか」という、基礎的ではあるのですが、実務的には一番大事なところから議論は始まります。そして、紆余曲折、試行錯誤を経て、吉村電工にとってのブランドの必要性やブランド構築の方法が、登場人物にも、そして私たちにも少しずつわかってきます。ここには、あらかじめ何をどうしたらよいのかわかって進路を決める神様のような人は、一人として登場しません。まあ、大学教授とかコンサルタントとか広告代理店担当の方が、最初の理解を促す役として登場しますが、例によって例のごとく一般論です。実際に吉村電工のブランドづくりについての理解を深めていくのは吉村電工の方々です。私たちと同じ身の丈の普通の人が、苦労しながらコーポレートブランドの構築を図っていきます。
  理屈も知っておきたいと思う方のために、ちょっとした解説を各章の後ろにまとめて書いています。 (本書まえがきより)

BtoBブランド「作戦指令」の要諦

1 ブランドづくりが必要なわけ
 現代では、企業の間でブランドに対する関心が盛り上がっています。消費財企業ばかりではありません。BtoB企業にも、「我が社にはブランドが必要ではないか?」と考える企業が増えてきています。どうしてでしょうか。ブランドが必要だと考えるいろいろな理由があります。ブランドが必要だと考える、次のような事情があなたの会社にも潜んでいませんか。考えてみてください。
(1) 業容、業態が広がって、ユーザーとの接点(コンタクト・ポイント)が多くなっている。
(2) 子会社化やアウトソーシングが進んで、ユーザーとの実際のコンタクト・ポイントがコントロールしにくくなっている。
(3)「売って終わり」の関係ではなく、お客さんとの継続的なお付き合いが増えている。業務が全般にサービス化していて、お客さんとの間で人が介在する余地が多くなっている。
(4)自社の性格や、自社が提供する価値が変わっている。

2 ブランドづくりの号令はトップ発
 BtoBブランドづくりにおいては、いろいろな部署がかかわります。本文の最初の会議の構成メンバーも、多様なメンバーです。メンバーのなかには、利害が異なる部署もあります。特に、営業部門は、同じ顧客に向けた関係づくり活動の中心であるだけに、ブランドづくりの部署と予算の奪い合いになりかねません。また、研究所の技術部門や工場の品質関連部門も、決して、ブランドという新しい資産を不可欠のモノとは思わないと思います。お客さんからの信頼は、ブランドのようなあやふやなモノに頼らなくても、我が社には優れた技術や間違いのない商品の質によって得ることができるという自負をお持ちだと思います。
 だからと言って、ブランドづくりを孤立無援で進められるものではありません。彼らの支援がないと成功しないのははっきりしています。と同時に、ブランドづくりがうまくいけば彼らにも十二分に貢献できることもはっきりしています。ブランドを通じてお客さんと良いコミュニケーションができるようになれば、ちょっとした技術の失敗や品質のミスに対してもお客さんとの間に深い溝をつくり出すことを避けることができるはずです。営業部隊も同じです。ブランドを通じてよいコミュニケーションができるようになるためには、彼らの協力が不可欠です。
 加えて、「社長が代わればまた変わる」といったものではなく、トップからの継続的な支援も確保されなければなりません。そのためには、「お客さんとの強いきずなとその鮮度の維持こそが我が社の命」という理解を徹底して組織として理解しておくことが必要です。

3 製品でなく、顧客に提供する価値で考える
 BtoBブランドづくりにおいては、いろいろな部署がかかわります。
 ブランドづくりを一つの契機として、(我が社が販売する)製品でなく、(我が社が提供する)価値で考えてみることが大事です。我が社の事業を「製品」で考えると、今手元にあるこの製品を売りさばこうと考えてしまいます。売りさばくこと、つまり在庫をつくらないことは経営上大事なことですが、時には「この製品を提供することで、我が社はお客さんのどのような問題を解決しようとしているのか」と考えてみることも必要です。そのことにより、我が社が社会において果たす使命、そしてゴーイング・コンサーンとしての組織の存在意義が見えてきます。
  私たちの人生でも、日ごろは仕事に一所懸命で人生の意味や自分の存在意義(価値)なんて考えることもありません。しかし、時々は、5年後10年後の自分のあり方を考え、方向づけることは大事なことだと思います。会社も同じです。

4 ブランドづくりの効果
ブランドづくりをうまくやれば、次のような効果を得ることができます。
(1) 知名効果
(2) 社内ブーメラン効果
(3) 社内での価値統一効果
(4) 取引コストの削減効果
(5) 市場価値を創造する(お客さんにとって新たな選択肢をつくり出す)効果

5 BtoBにこそ必要なブランドづくり/顧客関係の改善
 ブランドづくりは、お客さんとの新たな関係づくりを目指す仕事です。同じような仕事を、しかもそれを専門としてやっているのは、言うまでもなく営業部門です。とくに、消費財企業とは異なり、BtoB企業のように「顔の見えるお客さん相手」のビジネスをする企業では、営業は顧客関係において会社を支える最重要部門です。それだけに、ブランドづくりのためには営業部門の理解を得ておくことは必須です。ブランドづくりは、営業部門にいくつかの点で重要な貢献をします。
(1) オープンドア効果
 営業担当者が、お客さんと会ってから実際の商談に入るまでに、どれだけのハードルがあるのでしょうか。会社が有名になれば、そのハードルは当然低くなります。新規顧客開拓が課題の営業部門にとっては、これは大事な支援です。
  また、生産財を購入する企業は最初から数社に絞って検討を始めるのが常です。ですが、その数社の枠に入るために「会社の名前が知られていること」や「その分野の専門家だという評判をとること」は大事なことです。「まあ、あの会社を候補から外すわけにはいかないだろう」というわけで、ブランドがある企業は楽々とこのハードルを乗り越えています。
(2) 信用効果
  高い信用をもった会社、あるいは「自分たちはこんなことはするが、こんなことはしない」ときちんと自社の価値を宣言している会社は、相手企業との交渉時の厳しい値引き攻勢を少しは避けることができそうです。販売後のメンテナンスにおいても、余分な無償サービスを要求されることも少ないかもしれません。
  もちろん、会社の名前だけでそんな効果を得ることは簡単ではないでしょう。ここに、宣言した価値を実現する仕組みがあれば、効果は倍増です。
(3) 説得効果
  消費財の場合ほとんど、購入者=使用者=管理者です。しかし、生産財の場合は、それが分かれているのが普通です。そして、往々にして商品評価は三者で食い違います。使用者は使い慣れたモノが欲しいと思うだろうし、管理者はメンテナンスを含め管理しやすいモノが必要だと考えるだろうし、購入者はできるかぎりコストが低いモノを欲しいと思うでしょう。そのため、各部署間の調整が重要になりますが、それぞれ組織の事情もあってなかなか譲れるものではありません。加えて、組織だから、それぞれ上司に結果を報告しないといけません。そのため、いっそう譲れなくなります。
  その時、名もない企業の商品より名のある企業の商品の方が、その部署間調整では有利に働きそうです。まず、担当者も、有名メーカー製であれば、上司に報告しやすいでしょう。名もないメーカー製を選んだ場合、詳細にわたってスペックを報告しなければならないかもしれませんが、その種の製品で評判をとっている有名メーカー製であれば(あるいは、業界トップのメーカーであれば)、そんな細かい説明は不用かもしれません。そんなこんなの面倒を考えると、わざわざ名もないメーカー製を選ぶ気持ちは萎えてきます。
  こうした理由で、高いブランド・イメージをもつことは営業担当者の活動を助けます。しかし、このことをはっきり知るために、自身の会社の「営業プロセス」を明確にしておきたいものです。(本文より一部抜粋)

 このように、本書では「BtoBマーケティングにおいてブランドがなぜ必要か」「どのような場面でどんな考え方をすればいいのか」をやさしく解説しています。

(日本経済新聞社広告局企画開発部次長 横田浩一)


石井淳蔵・横田浩一 著
価格1,400円(税別)
発行:日経広告研究所
発売:日本経済新聞出版社

 目次
 第一章
  作戦指令を受けて―イントロダクション「ブランド戦略の開始に向けて」
  作戦準備 其の一 「プロジェクトチームの編成とそれぞれのブランド意識」
  作戦準備 其の二 「BtoBブランディングに関する情報を収集する」
  作戦準備 其の三 「自社ブランドの現状を把握する」
  作戦準備 其の四 「ブランディングの必要性をチーム内で確認する」
  作戦準備 其の五 「当社のブランドビジョンについて検討しよう」
  タカシくんのコーヒーブレイク 「プロジェクトの進捗状況を把握しなきゃ」
  ワンポイントアドバイス BtoBブランディングのベースを理解しよう
 第二章
  ブランディング実践 其の一 「ブランドビジョンについて考えよう」
  ブランディング実践 其の二 「当社らしいブランドビジョンとは」
  ブランディング実践 其の三 「ブランドビジョンについて、社長との議論」
  ブランディング実践 其の四 「二十年後の会社を支えるステートメントとは」
  ブランディング実践 其の五 「社長とブランドを共有するために」
  ブランディング実践 其の六 「ブランドによる社内コミュニケーションの計画」
  ブランディング実践 其の七 「社外へ向けてのブランディング発信」
  ブランディング実践 其の八 「ブランド発信によって何が変わったのか確認しよう」
  ワンポイントアドバイス  BtoBブランディングの三つのタイプ
 第三章
  ブランディング展開 其の一 「CSRとブランディングの密接な関係って…何?」
  ブランディング展開 其の二 「自分の言葉で社外に向かってブランドを語りましょう」
  ブランディング展開 其の三 「次世代に続くブランドの循環効果とは」
  最終話 「ブランディングは永遠に続く作業なのです」
 おわりに

お問い合わせサイトマップENGLISH