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日経ブランディング ~日経広告手帖別冊 2005年Winter掲載記事~

インターナルブランディングの実践
従業員へのブランド浸透が、
ブランドを向上させ、企業価値を高める

従来、ブランディングは、顧客の視点から語られてきた。しかし現在、意識の高い企業はインターナルブランディングを意識した経営に取り組んでいる。インターナルブランディングは、どのように実践され、何を課題としているのだろうか。

インターナルブランディングは、全社体制で展開する経営戦略

横田 ブランド戦略が経営のテーマになって数年が経ち、社外へ向けてのブランドはかなり議論されてきていますが、「インターナルブランドはまだまだこれから」という企業は非常に多いと思います。コーポレートブランド経営のなかでブランドがどのように従業員に、あるいはインターナルに影響を与えるのか、そして経営におけるそのポジションはどこにあるのかについて、それぞれのお立場からお話しいただきたいと思います。

伊藤 これまで「ブランディング」は、お客様を意識し、その多くがマーケティングの視点から語られてきたものでしたが、私の提唱する「コーポレートブランド経営」は、ブランディングを経営の中核に置くべきだという観点にあります。
 90年代は日本企業の経営が不調だったこともあり、単純に言えば、株主ばかりを向いたアメリカ型経営ではなく、従業員中心の従来の日本型経営でもない、一つ突き抜けたところに、日本に親和性のある新しい経営があるはずだと考えました。日本企業は、対顧客はもとより、重要なステークホルダーである従業員にもっと生き生きと働いてもらい、利益が上がり、企業価値が高まるという好循環な経営モデルを創る時期にあるのです。コーポレートブランド経営では、必要不可欠なものとしてインターナルブランディング戦略を推奨してきました。

米谷 現在、みずほフィナンシャルグループは、積極的なブランディング活動に乗り出しています。この10数年、銀行は後ろ向きのことに追われ、危機対応の時期を過ごしてきました。しかし、ようやくそれも終焉の時期に差し掛かりました。財務内容も改善され、批判も少なくなってきてはいるのですが、CB調査におけるみずほフィナンシャルグループの評価はそれほど高くありません。やはり、企業としてどこに進んでいくのか、何をよりどころにして経営していくのかというビジョンが明確でなければ、ブランド価値は高まらないのだと痛感し、ブランディング活動に取り組んでいます。
 社内に配布した「ブランドブック」では、「ブランドは評判とアイデンティティーによって創られてゆくもの」だと強調しています。みずほの看板やロゴマークといった「アイデンティティー」については多くのステークホルダーに認識していただいていると思いますが、「評判」をどうコントロールするかは大きな課題です。その手段として、「約束の表明」「約束の実行」というコンセプトを社内へ浸透させています。さらに、「われわれの存在意義は、お客さまのより良い未来の創造に貢献するフィナンシャル・パートナーであること」だということを改めて認識していこうとしています。
 金融の場合、商品のブランド力が形成されにくい一方で、社員が外部に対しての大きなメディアになっています。その意味でもインターナルブランディングを強化し、意識改革をしてゆきたいのが現状です。

太田 ホンダでは、3年前から「生き生き自主自立」をテーマにして従業員が生き生き働ける取り組みを行っており、意識調査を一つの管理指標として見ています。近年の意識調査の結果では、「ホンダで働き続けたい」という意識がたいへん高い数値になっています。なぜこのように高い数値が出ているのかは分析し切れていないところもあるのですが、少なくともホンダという会社が好きで働いてくれている従業員が非常に多いという認識を持っています。しかしそれで安心できるわけではありません。国内で4万5千人、全世界では約16万人の従業員がホンダブランドを背負い、うち約13万人が直接製造に携わっています。インターナルブランドに関して言えば、その13万の従業員が、いかに同じ気持ち、情熱を持ってホンダの製品を造るかということが大きな命題であり、その実現の手段は、ホンダフィロソフィーの伝承に尽きるのではないかと考えています。
 ツールとして「フィロソフィーハンドブック」という、従業員が携行できる実践ガイドを作っていますが、それは内容を暗記させるというためではなく、創業者から連綿と続くフィロソフィーを知り、それぞれの従業員が感じ取り、100人いれば100通りのホンダフィロソフィーの実践をしていってほしいと考えています。方向は同じくして、一人ひとりの個性を実現したうえでのDNA継承ができる、そんな人材育成を実践していくことが、世界中の従業員が同じ気持ちや情熱を持ってホンダの製品を造り、ブランドを構築し、また強さにつながると考えています。

首藤 博報堂ブランドコンサルティングでは、ブランディングが経営上の重大なテーマになり始めた90年代後半から、「企業がお客様にどのような価値を提供するか」という方針決定とそれを実現するためのプロジェクトを、部門・部署を超えた全社横断型の形態でお手伝いさせていただいております。その過程で強く感じたのは、日本企業では全社の戦略的課題に対して、社内の垣根を超えた議論があまりなされていないということでした。逆説的にとらえると、お客様を起点に会社というものを横断型で議論するそのプロセス自体が社内意識を変え、インターナルブランディングの実現につながり得るということでした。
 一言で社内といっても、正社員に加え、契約社員、派遣社員、パート社員、外国人社員、そして分社化した販社の社員など、今や雇用形態は多様化しています。だからこそ、すべての関連人材による強い求心力を実現するためには、コーポレートブランドの共有が非常に有効です。なぜなら、雇用形態がなんであれ、外から見れば同じブランドを担うことになるからです。従来、マーケティングの一つのテーマにすぎなかったブランディングが、インターナルブランディングという、まさに全社共有のテーマに変わってきたと実感しています。

バックヤードの社員も、お客様に見られている意識を持つ

横田 社員向けのインターナルブランディングというと、社内へ向けた戦略ということでどのような手法をとるか難しいという声をよく聞きますが。

伊藤 インターナルブランドは、お客様に対するブランディングとも密接不可分な関係にあります。企業イメージ、あるいはブランドイメージは、多様な因子によって形成されるわけですが、社員は重大な因子の一つです。例えば私がみずほの一顧客だとすれば、応対してくださる社員の方は、私のみずほに対する企業イメージ形成を大きく左右します。みずほフィナンシャルグループがいかにすばらしいブランドステートメントをつくり、「お約束」とうたっても、目前のリアルな社員が、それに反するような行動をとったりマイナスの雰囲気を醸し出していれば、矛盾を強く感じてしまいます。お客様は、冷静に個人の社員と会社のイメージを分けて認識しているわけではありません。
 つまり、従業員に向けたインターナルブランディングが、実は、お客様に向けたブランディングであるということを認識しなければなりません。お客様と接している人たちは、そういう意識は相対的に高いのですが、お客様と遠いところにおられるバックヤードにおいて、そのことを認識していないことがあります。ですから、直接お客様と接していない従業員たちに、いかにお客様の顔を想い浮かべながら、あるいはお客様から見られているという緊張感を持ちながら仕事を進めていただけるかということが、インターナルブランディングの課題だと思っています。結論としては、バリューチェーンのすべての社員にブランド意識を持っていただかなければならないのですが、少なくとも現在時点で、どういう状況なのかということを知っておかなければなりません。状況が分かれば、単にすべての社員に研修をやるのではなく、意識が低い層を重点的に対応するなど、効果的な対策をとることができるはずです。

米谷 伊藤先生がおっしゃるように、銀行では、実際に顧客と応対する社員がその銀行の印象をつくる面が強くあります。
 毎日お客様に接している社員は、問題意識を持っていますが、その背後の社員たちの意識とはギャップがあり、それをどう改善していくかが非常に重要な課題です。その方策の一つとして、9月に日経新聞にシリーズで広告を展開しました。もちろん金融に関心がある方や企業の財務担当者などに向けてメッセージを発信しているのですが、その裏ではグループ社員を強く意識しているのです。広告展開を通じて、これからはこのブランディングに取り組みますよ、というメッセージが一人ひとりの社員の意識の中へ浸透してほしいと願っています。

首藤 日経新聞の読者へ向けてという点では、社員も一人の読者ですから、非常に有効な手法だと思います。これまでは、「不言実行で地道にやっていけば会社は自然に良くなる」という美学も通用しましたが、これからはそうはいきません。むしろ、理想像を世間に公約してしまうことが重要なのです。ミラー効果といいますが、理想像を公約することで、逆に全国の従業員に「世間に理想像を求められている、それを裏切る行為は許されない」ということを意識してもらう効果が期待できます。それはエクスターナル、インターナルを問わず、ブランディングに関しては効果的な手法です。

伊藤 不言実行は日本的な美意識で、同じように「縁の下の力持ち」という美意識もあります。バックヤードの人々が「おれは営業の縁の下の力持ちだから」みたいな言い方をする。美意識はよく分かりますが、それではブランディングは実践できません。縁の下にいるつもりでいても、お客様やさまざまなステークホルダーから見られているのです。バックヤードの人たちだって、リクルーティングに際し、多くの応募者に会うはずです。たとえ縁がなかったとしても、面接官のイメージが良ければ、その応募者がお客様になることだってあるのです。
 コーポレートブランドは、言い換えれば「全員経営」です。すべての社員がその経営にあたるのだという意識を持つことができる企業が、本当に強靱で骨太な競争力を持つことができるのだと思います。

過去を振り返りすぎず、大切なDNAを継承していく


日本経済新聞(2005/9/20)掲載 全30段2連版

横田 先ほど、太田さんより「ホンダで働き続けたい」という社員が、非常に多いというお話がありましたが、ホンダや車、バイクが好きな人が入社してくるからなのか、あるいは入社後に企業文化が自分に合っているとか、仕事が面白くてよりホンダが好きになるのか、その原因についてどのようにお考えですか。

太田 基本的には「ホンダが好きで入社する」という社員が多いと思います。私が入社した時代には二輪車好きが多く、オートバイを2台、3台持っているというのは当たり前で、同期入社の中には15台持っている人がいました(笑い)。異常ともいえる熱烈なホンダファン、オートバイ好きが多かったのですが、最近はそういった二輪車だけに偏った熱意を持つ人材は少なくなりました。二輪車好きの社員が少なくなってきたのは、かなり頭の痛い問題と思っています。しかし一方ではF1参戦やアシモの研究をやっていることも大きく影響しているからなのか、まだまだ「ホンダが好き」という応募者は非常に多いのです。
 創業者から始まって、代々の会社のトップはみんなF1が好きで、今の社長は自分でフォーミュラー1をドライブします。歴代のトップが実践してきたように、自らが望み、熱意があればさまざまなことにチャレンジができる風土がホンダにはあると思っています。
 ただ、企業規模が大きくなってしまったことによって、社員個人のビジョンが見えにくくなっていることも事実で、「組織の壁をどう崩せばいいのだ」「昔ほど自由闊達な風が吹いていないのではないか」という、問題に直面しています。
 F1だけではなくいろいろなレース参戦など、なにかに集中して全員一丸となって燃える活動が非常に好きな会社です。例えば、都市対抗野球でホンダのチームが東京ドームに出場したときは、可能な限り従業員全員で応援しに行くのです。やはり製造業ですから、工場で従業員が気持ちを一つにして仕事に取り組むことはたいへん重要です。したがってこういった「結束」を感じるイベントは非常に大切だと思っています。昔とは従業員の気質も変わってきていますし、面接に来てくれる学生の方々の中には、「ホンダが大企業だから」という方が確実に増えています。したがって今後は、いかに熱意があり、チャレンジ精神のある人材を採ることができるか、そしていかにブランディングに沿った教育をしていくかということが、重大な課題だと思っています。

伊藤 日本マイクロソフトの前社長の成毛真氏が「多くの人がマイクロソフトに『安定的だから』という理由で入社してくる」と嘆いていらっしゃったのですが、成功したがゆえに、尖ってない人も入ってくるというパラドックスに陥ってしまうベンチャー企業のジレンマがありますね。いま太田さんがおっしゃったような、そういう安定を求める人たちへの対策は重要だと思います。
 僕はエモーショナル・キャピタルと言っているのですが、「社員の士気」というものは「資産」なのです。いかに受け継がれてきたチャレンジ精神を持続させていくかということでは、ホンダがF1に参戦することや都市対抗野球などは、とても意味のあることだと思います。アシモも、その種の投資成果のひとつではないですか。「ホンダのアシモ」であるから、強いインパクトを放ったけれど、違う会社が同じものを発表してもピンとこなかったと思います。私はよく「スピルオーバー」という表現を用いますが、長年のホンダブランドあるいはブランディングの成果が溢れ出て、アシモ効果が表れたのです。アシモを見たからではなく、先にホンダありきで、「ホンダで2足歩行ロボットを造りたい」と手を挙げる人が増えてきているのではないでしょうか。
 「ホンダフィロソフィー」というのは、本田宗一郎氏から始まり、おそらく熱烈で激しいものだったと思うのですけれど、時代の流れの中で、どうしても少しずつ薄まってしまう危険性があります。スピリットやフィロソフィーは、安心したり楽観したりしてはいけないものです。

太田 以前、トップが語った言葉を拾い集めた冊子を従業員教育で使っていたのを少し控えた時期もありましたが、最近はホンダフィロソフィーの実践には必要だと考え、現世代が理解できるような形にアレンジして使っていこうとしています。
 本田宗一郎がどうだったか、何を言ったかということではなく、現在のトップが求心力のあるフィロソフィーを持ち、いかに従業員をそこに集めるかということの方が重要で、過去から学ばなければならない大切なものは、自分のうちにDNAとしてしっかり受け継ぎ、実践していく責任が全員にあると考えます。海外展開を行う上ではフィロソフィーの伝承は欠かすことのできないものであり、海外の現地従業員たちは研修内容を素直に一生懸命受け入れて理解しようとしてくれています。

伊藤 私の見解では、ブランディングのコンセプトを、国内社員と海外社員のどちらが素直に受け止めてくれるかといえば、ほとんど例外なく海外社員です。仮説ですが、日本の社員の多くは、改めてブランディングを押し付けられ、「そんなことを議論しなくても、十分に分かっているよ」というある種の錯覚に陥っている傾向にあります。ところが、実際には本質までは理解していない。有名な本田宗一郎氏について、知っていると思っている。しかし、実は、詳細や彼の本質を分かっていないのです。
 一方で、海外社員は、そういった聞きかじりの知識がありませんから、「自分はなぜホンダで働いているのか」と常に自問しています。その自問に対して、ブランディングという満足するに足る答えを得て、この会社で働いている自分の行動を正当化しようとします。これは本来的な欲求としてあると思うのです。雇用や転職の機会はいっぱいあるわけです。ところが日本にいると、そういうレーゾンデートル(自己の存在意義)と向き合わずに日々の仕事をこなし、会社での日常が過ぎていってしまうものなのです。

インターナルブランディングは人事採用面で、劇的な効果を発揮していく

首藤 先ほどの「バイク好き」の話についてですが、ホンダで働く人とホンダのバイクを買う人というのは、まったく別の次元でとらえるものではなく、本当は同じ人の局面の変化でしかないと考えると、ブランディング効果がインターナルで劇的に発揮されるのは、実は採用時だと思うのです。そして、それは功罪相反するものなのです。
 例えば、航空会社を見た場合、客室乗務員はあこがれの仕事ですから成績の優秀な人材が大勢応募します。採用された彼女たちは、お客様へのサービスを追求するというより、客室乗務員という枠の中で一番になることを目指してしまう。しかし、それではもっとも大切なお客様は満足しません。それならば、秀才でなくとも、「お客さんにサービスすることが好きだ」という人材を契約という形態で採用する方が得策な場合だって出てくるのです。
 ブランドには、認知度や一流感などに加え、「パーソナリティー」という要素があります。そして、ホンダらしさとか、みずほらしさとかというのは、そこで働いている人のタイプや行動スタイルが大きく影響します。そして、それを劇的に変えるためには、むしろ3年、5年というスパンで採用基準を大きく変えなければならないと思います。

横田 企業文化に合いそうな人を採用するということですか。

首藤 そうですね。単に収益に貢献する能力のありそうな人ばかりを採用するということではなく、ブランドの方向性や自社が目指す企業文化にあった人材をいかに採用するかということです。

太田 「即戦力になる優秀な院卒を採れ」という意見もありますが、現場のマネジャーは、「学歴に関係なく元気のいいやつを採ってこい」と言います。大学で1講座40時間だとすると、「それを5日で教えてやるから」と言うのです。しかし、自分で線路のないところを走れるような人材を集めるのは、非常に難しいのが現実ではあります。

伊藤 従来の教育は、ケーススタディーばかりを授けて、類例がないと途端に動けなくなるような人間が育ってしまう側面が確かにあったと思います。やはり、白地のキャンバスを渡して、自ら課題を創造させるような、そういう教育も実現しなければいけない。しかし、線路を自分で敷けない人も指示を受けたことはきっちりやるのです。そういう人材も企業には必要で、いかにバランスをとっていくのか、ということがこれからの企業経営の大きな課題です。
 どういうブランドを得たいかとか、どういう価値観を大事にするかいう議論には希望があります。ブランドの議論をするときは必然的に、また無意識のうちに過去に触れていて、その過去を背負ってお客様にお約束をするわけです。希望がある過去、フィロソフィーをもう一度社員全員が再確認することはすごく大切です。

ブランド戦略が品質を牽引する理想の循環へ

米谷 みずほフィナンシャルグループの場合、ひと昔前であれば「経済の発展に寄与する」という志を持って門をたたく人が多かったのだと思います。ところが、この10何年かは、むしろ経済の足を引っ張っているような言われ方をしてきました。さらに、3つの銀行が統合してみずほフィナンシャルグループとなったために、3行それぞれ良い過去を持っていたのですが、それを未来へ向けて昇華させることは、容易ではないと感じています。
 先ほどのお話の裏返しになってしまうかもしれませんが、我々の場合、過去を振り返ることは必ずしもポジティブな行為とはいえません。それより、しっかりとお客様を見据え、新しくできた会社が向かうべき方向を見せることの方が大切です。新しいブランドの方向を見せてやらねばならない。ですからこのブランディング戦略が成果を見せ始めたら、おそらく統合企業の最初のブランディング成功例となるのではないでしょうか。

伊藤 そうですね。ぜひ、成功させていただきたいと思います。私の体験論で恐縮ですが、それぞれの企業の皆さんとブランディングをやっていく際に、暗くなったことは一度もないのです。
 ブランドを高める活動、要するにコーポレートブランディングというのは、言い換えれば、「ビー・ポジティブ運動」です。つまりブランディング活動は、ポジティブでなければ前に進みません。同時に、ブランドの議論をすればするほど、気持ちが前に向くのです。過去を振り返ることも大切だという意見も、将来に目を向けるからこそ過去を知りたくなるのです。
 ある会社で「ブランドステートメント」について議論してきて、先日、約800人の社員を呼び、そのお披露目をやりました。社長を含め、全役員が壇上に上がり、パネルディスカッションをし、生産現場の人たちも参加したのですが、非常に盛り上がりました。生産現場の社員も一緒になって積極的にポジティブな意見を出しているのです。つまり、ブランド意識を高めると品質にも大きく影響するのです。ブランド意識を高めれば、このようにエモーショナル・キャピタルが高まり、生産に積極的に、熱意を持って取り組むようになり、その結果、品質もブランドも高まるという、理想の循環ができるのです。
 ですからブランドを高める活動というのは、実に実際的で、品質向上やシステムアップにつながっていくことなのです。BtoBの企業でもそれは同じで、すべての企業において、ブランディングは極めて重要な活動なのです。

首藤 インターナルブランディングというのは、どのようなお客様にどのような価値を提供するかということについて社員全員がとことん考え、参加する活動です。インターナルといっても単なる社内だけの運動ではありません。インサイド・アウト(社内の思いを顧客へ)ではなくて、アウトサイド・イン(顧客のニーズを社内へ)と考えることが、まさにインターナルブランディングなのだと思います。

伊藤 本日の座談会で、コーポレートブランドを高める活動とは「会社という法人格と社員という人格のシンクロ」なのだと改めて確認できました。いままで両者の間には距離があり、悪い時期には「数字が大変な状態だ」と会社の生き方を社員に押し付けていたのです。一方で、社員が会社に要求ばかりする関係も良くありません。よく社員が「会社が」と言うときは、自分の部署以外を指しています。私はやっているけれども、あっちがやっていないと。どちらも「ウィン・ルーズ」の関係になってしまっているのです。やはり、「ウィン・ウィン」の関係に変えていかなくては誰も幸せにはなりません。会社と社員、両者の生き方が、強制ではなく自発的に同調することが理想の姿で、その触媒になる、つまり両者が共有できるものが、まさにインターナルをしっかり意識したブランド経営なのだと思います。多くの企業がそれを再確認し、経営のフォーカスを当てていけば、日本企業には明るい未来があると思います。

横田 どうもありがとうございました。

一橋大学教授 伊藤 邦雄氏

みずほフィナンシャルグループ コーポレート・コミュニケーション部
ブランドマネジメント室長 米谷 雅之氏

本田技研工業生産本部
4輪生産企画室E人事開発センター所長 太田 康氏

博報堂ブランドコンサルティング社長 首藤 明敏氏

司会:日本経済新聞社東京本社広告局
業務推進部次長 横田 浩一

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