音声ブラウザ専用。こちらより本文へ移動可能です。クリック。

NIKKEI

NIKKEI AD Web

広告申し込みに関するお問い合わせはこちら

English Page


CB Valuatorとは?
ブランド価値ランキング
日経企業イメージ調査
実践コーポレートブランド
日経ブランディング

日経ブランディング ~日経広告手帖別冊 2005年Winter掲載記事~

従業員意識に見る、働くことへの「志」

昨今の景況感の回復は、様々な側面から組織に属する個人への追い風となっている。しかし、日経リサーチが2002年と2004年にビジネスパーソンを対象に従業員価値(=働きがい)を調査した結果から見えてきたのは、重要度が高い構成要素ほど現状評価が低いという組織人の姿と、その変化の様子だった。いま従業員個人にも組織にも求められる「志」とは?

 夏の「小泉劇場」といわれた衆院選での与党圧勝以降、株式市場の活性化を特に実感できるようになったことを筆頭に、景況感の回復が広く認識されてきたように思う。不良債権の呪縛を乗り越えつつある金融や旺盛な中国需要に支えられた素材企業等、冬のボーナスの前年比高水準が見込まれている。新卒就職市場でも、長く続いた人員削減や、まもなく迎える団塊世代の大量定年をふまえて、いわゆる「就職氷河期」を脱する気配さえも実感できる。
 日本の企業経営は近年、日本の伝統的な従業員重視経営ではなく、コーポレートブランド経営やCSRのように、様々なステークホルダーにバランスよく配慮することが持続的な成長に欠かせないことに着目してきた。しかしながら勝ち組といわれる企業の代表格であるトヨタ自動車やキヤノンは、一貫して国内生産や終身雇用を重視してきたように、従業員重視の経営スタイルを強調することで知られている。

従業員個人は組織にいることのメリットを模索

 このように従業員の立場からは朗報が多い昨今ではあるが、従業員個人の間でも大競争時代が続き、勝ち組・負け組が明確になる傾向は依然変わっていない。
 日経リサーチが、インターネット調査モニターの中からビジネスパーソンを対象に実施した「従業員価値調査」からも、こうした大競争時代の中における従業員個人の間で、自らの働きがいをどのように位置づけるかを模索する姿がうかがえる。図表1、図表2は2002年と04年に実施した調査結果から得られた従業員価値構造モデルである。

 この調査では、総合的な指標として従業員価値(=働きがい)を算出し、その価値構造分析を試みている。これは、“従業員価値は従業員が仕事を円滑に進める上で必要なすべての要素(=以下「仕事の質」)と、従業員が企業から得られるベネフィット(=以下「得られるベネフィット」)のバランスで決定する”という考え方をベースにしたものである。前者は仕事内容や労働時間、周囲とのコミュニケーションなどを含む。後者は給与やボーナスといった経済的報酬だけではなく、その企業で働くことによって得られる知識や経験、社会的信用なども対象としている。この「仕事の質」「得られるベネフィット」それぞれの構成要素を、統計的手法を用いて調査結果データから導き出している。図表1、図表2の各構成要素にある数値は、その構成要素のウエイトを100分率で示したものであり、いわば働きがいに与える影響度ともいえる。
 2年間の変化では3点のポイントをあげることができる。1点目は「仕事の質」よりも「得られるベネフィット」に働きがいのバランスが移動している点である。これは自分がその組織に属することのメリットを、より厳密にドライに考える傾向が強まっていることに他ならない。ただ、ここでいうメリットとは直接的な報酬だけではない点に着目したい。「得られるベネフィット」は「成績報酬」「教育・福利厚生」の二つの要素から構成される。「成績報酬」とは直接的な報酬による納得感以外にも昇進や能力・経験の取得等への納得感が含まれ、「教育・福利厚生」には教育機会や評価フィードバック、健康管理体制や福利厚生サービスが含まれる。
 「教育」は02年調査では「仕事の質」に属したが、04年調査では「得られるベネフィット」に分類された点が2点目のポイントである。従業員にとって「教育」は仕事を円滑に進める上で必要な要素というよりも、むしろ“教育やトレーニングを通して自分の能力やスキルを向上させることがメリットだ”という認識になってきていると考えられる。「教育・福利厚生」には、評価結果のフィードバック関連項目も含まれており、“教育やトレーニングと併せて自己改善の機会を得られることがベネフィットである”と捉えられるようになってきているといえるだろう。
 3点目のポイントは「仕事の質」における「リーダーシップ・ビジョン」の影響度が02年調査から強まっている点である。価値観の多様化とその変化が非常に早い昨今、個人の中でも然りであるが、組織に対しても“何をどのようにしたいのか”を厳密に求めていることは明確である。

従業員も組織も「志」を高く

 図表3は図表2で示した従業員価値構造モデルの各構成要素に対する従業員の現状評価スコアである。「リーダーシップ・ビジョン」「成績報酬」「教育・福利厚生」といった従業員価値への重要度が高い構成要素ほど現状評価が低いことが見て取れる。“自分は頑張った”ことを認識している「目標・成果認識」や、顧客とのコミュニケーションや高品質への納得感を示す「顧客満足」、「取引の透明性」が中央点の3点を超えているのとは対照的である。
 こうした現状評価の傾向は、「仕事の質」「得られるベネフィット」双方を高く評価している従業員、すなわち報酬だけでは語れないサラリーマンとしてのロイヤル層に属する人は少数派であることにも現れている。「仕事の質」「得られるベネフィット」の現状評価スコアをもとにクラスター化した六つの層で、双方の評価が高い層は全体の29%であった。

 従業員個人は何をしたいかという「志」を、組織は明確なリーダーシップという「志」を、双方がそれぞれに追求する姿がこれら調査結果から感じられる。企業は自らの組織の魅力を社内外に充分に伝えることで従業員価値を向上させ、従業員価値の向上が顧客や株主、社会といった様々なステークホルダーとの関係の好循環サイクルを生み出すことで、企業としての持続的な成長につながっていくことは明白であろう。
 組織価値や従業員価値は時代に応じて変化していくものである。組織に属する者すべてが時代に応じて「志」を追求していくことを願ってやまない。

株式会社日経リサーチ第二企画営業局
第四部長 桑原 太郎

お問い合わせサイトマップENGLISH