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日経ブランディング ~日経広告手帖別冊 2005年Winter掲載記事~

インターナルブランディングとコミュニケーション

ブランド構築の際、発信側からの「こう思われたい」というイメージと、顧客や社会から思われているイメージには常にギャップがある。インターナルブランディングの強化で、まず従業員とコミュニケーションをとり、企業の理念や理想像を理解してもらうことが、ブランド向上への第一歩である。

セールスプロモーションだけではブランドは構築できない

 「会社のブランド」は、顧客や取引先をはじめとするステークホルダーの「心の中」にあるイメージです。いままでのブランド論は、BtoCの商品・サービスなどから連想される消費者側、つまり「川下」から見たものが多かったのですが、企業のコミュニケーション手段の大きな部分を占める広告においても同じことがいえます。
 コーポレートブランドが日本企業にとって今ほど重要だと考えられていなかった九八年ごろと比べると、広告全体に占める企業広告の割合は倍増しています。しかし、マス広告費の半分以上は商品広告というのが実情で、企業広告は「セールスプロモーションの一環」という位置づけでしかありません。たとえ商品広告にコーポレートブランドを意識して社名表記やタグラインを統一していても、販売促進のための広告であることに変わりはないのです。
 コピーライターの梶祐輔氏は、企業広告をアドバタイジング、商品広告をセールスプロモーションと明確に区別している米国の広告界と日本のそれとを比較し、「日本の広告の歴史において、アドバタイジングはなくセールスプロモーションしかなかった」と著書『広告の迷走』の中で述べています。

「社内から」と「社外から」に生じるイメージの差

 誰かに「あなたが働いている会社のブランドは?」と聞かれた場合に、「このBtoC商品は有名ですが、本当はこんなサービスをしている会社で、1番売り上げが多いのはBtoBの分野なんですよ」などと、長々と説明されている方は意外に多いのではないでしょうか。あるいは子供に、「うちの会社は、○○の部品や○○の一部をつくっているほどで、技術力はすごいんだよ」と説明した経験がある方もいるでしょう。
 このように、「社員が思われたい会社のブランド」と「社外から思われている会社のブランド」には常に差が存在します。このギャップを埋めていくことがコミュニケーションの役割です。ブランド構築には「こう思われたい」という「川上」、つまり発信側においての議論が実はとても大切なのですが、現状ではそれがなされていない企業が多いように感じます。
 一方で、ブランド広告を展開している多くの企業は、広告の効果としてエクスターナルに対してのみならずインターナルへの影響に期待しているはずです。なぜなら、ブランドのステートメントやコアコンピタンスを外に対してコミュニケーションすることは、同時に内部に対してもメッセージを送ることになり、従業員がブランドメッセージを共有し、さらにその意識が高まるからです。また、外に対して行ったコミュニケーションについての感想を、自社の営業マンが顧客から聞いて意識する、あるいは従業員が「自社は外に対してこのような広告を発信している」ということを意識する、といった「ミラー効果」も期待できるでしょう。

理念や姿勢はイメージアップのドライバーになる

 「社員が思われたいブランド」の構築にあたっての目標は、第一に「認知度」をあげることです。特にBtoB企業で、顧客やリクルート対策でブランド構築の作業を始める場合には、ほとんどの作業が知名度の向上に費やされることになります。『日経企業イメージ調査』の対象企業は現在約1200社にのぼりますが、その「認知度」のスコアを見る限り、まだまだ多くの企業が「あまり知られていない」のです。「認知度」を上げるためには、はじめに自社の商品・サービスを前面に打ち出したコミュニケーションを行うことが近道といえるでしょう。
 一方、既に認知度を獲得している企業においては、認知指標よりも「好感度」や「一流イメージ」のほうが利益や売り上げなどの財務データと相関が高いという調査結果がでています。つまり、ひとたび認知されてしまえば、「好感度」や「一流イメージ」など、認知度の先にある印象を追求するほうが、ブランドイメージの底上げになるのです。
 トヨタ自動車は90年代後半からの「地球環境に配慮している」イメージの上昇が、他のイメージを牽引してきました。日産自動車は「ゴーン効果」で「経営者が優れている」というイメージがドライバーの役割を果たし、イメージ全体を伸ばしています。このように、社外から「優れている」と思われるイメージのドライバーは、決して商品・サービスから由来するものだけではありません。社会的責任の果たし方やトップの経営手法などから発信されるコーポレートコミュニケーションは、企業のメッセージとしてブランドを構築していくのです。

国語力によるコーポレートコミュニケーションを

 「会社とは何か?」「このブランドは何か?」「企業の社会的責任とは何か?」「働くとはどういうことか?」など、企業のあり方についての本質的な問いかけが話題になっている今、川上からのブランド戦略におけるコミュニケーションの議論がしやすい環境になってきました。つまり、「コーポレート・レピュテーション(会社の評判・名声)」が意識されてきたのです。
 バブル崩壊以降、上場企業は利益やROI、ROAなど、株価に大きな影響を与える数字上の経営目標を必死に追いかけてきました。しかし、その数字目標が達成されたとしても、それだけでブランド構築はできません。経営目標が財務データだけの会社には、“算数”はあっても“国語”がなく、そういった企業にはコーポレートコミュニケーションが社外へ向けても社内に対しても存在しないのです。
 「思われたいブランドとは何か」の議論は、そもそも企業の存在価値についての議論であり、そこで得た結論が事業ドメインや社員の行動規範を定め、従業員などステークホルダーのロイヤルティーを向上させ、その会社の持続可能性を高めていきます。

上質なコミュニケーションからグッドカンパニーは生まれる

 「好感度」や「一流イメージ」の先にあるものとして、「あの会社はリスペクトできる企業だ」というイメージがあります。このイメージの獲得が最終的な到達点であるとすれば、具体的にどの点がリスペクトすべきだととらえてもらうかが重要です。そして、コーポレートブランドをつくり上げるために、「この会社の存在意義とは何か?」、「この会社のCSRとは何か?」を徹底的に議論し、その結論が消費者や取引先にどのように映るかを見据えてブランド構築へ向けてのコミュニケーションを行っていくべきでしょう。
 日本の企業の多くは、すばらしい事業や社会貢献をしているにもかかわらず、日本独特の「陰徳(人に気付かれない徳)」という文化のなかで、上手にコミュニケーションがとれていないようです。企業としての理念や理想、より良き存在であることを社会に承認してもらうことは、すべてのステークホルダーにとって価値のあることなのです。
 そのためには、まず従業員に会社を理解してもらい、さらに満足度を高めるインターナルブランディングの実施が大切です。社内外にコミュニケーション活動をすることによって様々な反応が返ってくると思いますが、それらは新たな企業のあり方を模索するための、そして社会と共生できる「グッドカンパニー」になるための指標となるはずです。

日本経済新聞社東京本社広告局
業務推進部次長 横田 浩一

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