音声ブラウザ専用。こちらより本文へ移動可能です。クリック。

NIKKEI

NIKKEI AD Web

広告申し込みに関するお問い合わせはこちら

English Page

広告手帖

第8回:『ジャパンブランドルネッサンス』/
グラムコ(株)代表取締役社長 山田敦郎
第8回:『ジャパンブランドルネッサンス』

未曾有の大災害がもたらしたもの

2011年3月11日。東日本大震災に見舞われて、一時日本の経済の歯車は、完全に停止してしまった。現在もなお、被災地では不自由な日常を過ごしている被災者の方々がおられる。この先の生活基盤や人生の展望もなかなか見いだせない方も多いのではないだろうか。被災地の復旧と、被災者の皆様の平穏な日々が、一日も早く実現し回復することを願ってやまない。
今回の震災は1000年に一度起きるか起きないかといわれる大災害だった。08年のリーマン・ショックは100年に一度の経済危機。大変な時代を我々は生きているのだなと思う。
私は震災の数日後、クライアントの新工場竣工式に出席するため、上海、常州へ飛んだ。また3月末には北京へも出かけた。中国は震災後連日、テレビなどのメディアで特集番組が放映され続けており、人々の関心の高さに驚かされたものだ。

中国でいろいろな方々と話しをしてみると、彼らの気持ちは2つ。1つ目は被災地の人たちの安全や日本の復興を願う気持ち。2つ目は放射能汚染に対する恐怖心などから来る日本製品への不安である。実際震災直後に、まことしやかな誤情報がネット上に流された結果、彼らの不安感は一層強まった。隣人として日本の復興は心から願うが、日本製品への信頼は揺らぐ、という二律背反の気持ちである。震災と原発事故は、我が国のブランドの総体を大きく傷つけたといわざるを得ない。

日本のブランド復興に向けて

私の会社では、ブランディングファームとして何かお手伝いできることはないかと考え、5月から「ジャパンブランドルネッサンス(歩みを止めない。国と企業と一人ひとりが活力を取り戻すために)」という活動を開始した。日本のブランド復興を支えていこうという思いである。この活動の柱は3つだ。

1.企業支援(とりわけ被災地にある中堅中小企業の支援)
2.地域支援
3.ジャパンブランド復興

我が国企業の87%を占める中小企業は、日本経済の元気の源といえるが、被災地企業だけでなく全国の中小企業も間接被災者となっており、この時期だからこそ彼らのブランディングを支援していこうと考えたのだ。また地域支援とは、主に福島県を対象としており、地域ブランドとして傷ついたFUKUSHIMAの印象を、いかに回復させていくかを検討する。3については、私たちの国内外の活動を通して、あるいは政府への働きかけなどで、日本のブランド復興を推進していこうとするものである。
次回は中国市場でのコーポレートブランド構築成功事例をご紹介する。

インターナルブランディングの加速

上記企業支援の柱は、インターナルブランディングである。
実際のところ、リーマン・ショック以降、企業規模に関わらずインターナルブランディング(内的ブランド啓発活動)の動きが活発化している。

ある化学系企業では、事業別の分社化を繰り返した結果、事業子会社の向う方向が拡散してきており、新体制で中期経営計画を打ち出すにあたって、これら各社間に求心力を創り出すべく、理念やビジョン、行動指針などを再定義し、グループ社員を巻き込んでいく活動に着手した。
さらにある食品系企業では、子会社間の事業シナジーを生み出すために、グループブランドを前面に出して各社のアクションを束ねるインターナルブランディングを展開している。そのために、各社間でも活発に議論し、協業体制での新製品開発も進めている。
また、ある機械メーカーは、新しい経営者にバトンタッチしたのを機会に、中期的、長期的目標(あるべき姿)を三段階で明示し、それを社員に示すことで組織としての一体感を醸成しようとしている。
ある会計事務所では、次代への事業承継も視野に入れながら、ブランドコンセプトの再構築を始めている。社員参加型でプロジェクトを推進し、若手にも主体的な行動を求めており、象徴的な旗印(VI)の開発にも入っている。

弊社は、上記のプロジェクトのいくつかにおいて、ブランドスタイルを定義するためのセッション(イマジンセッション)を組み込んで、ビジョンの可視化にも踏み込んでいる。
震災後、現内閣への非難の声が高まっている。対応が誤っている、対応が遅い、という声も聞こえるが、もっとも残念なのは、いまだに明確なビジョンが示されていないことだ。
9.11のときニューヨーク市長だったルドルフ・ジュリアーニ氏は、最近の日本経済新聞紙上で当時を回顧するとともに、「復興にはビジョンが不可欠」と語っている。いったい私たち日本人はこれからどこを目指して頑張ればいいのだろう。
ブランディングとはビジョンを明確にして、人々をその夢へと向かわせるものだ。
つくづく今の日本にはブランディングが足りない、と思わせられる昨今である。



グラムコ(株)代表取締役社長 山田敦郎(やまだ・あつろう)

慶大法学部卒。総合商社の丸紅を経て87年同社設立。04年上海・北京に現地法人展開。アジアNo.1のブランディングファームを標榜する。日本CI会議体幹事。内閣府沖縄美ら島ブランド会議座長ほか。
『ブランド進化論』(中央公論新社)、『探求メジャーブランドへの道』(税務経理協会)、『パワーブランドカンパニー』(東洋経済新報社)、『品牌全視角』(上海人民出版社)など著書多数。



[ 6月10日掲載 ]

[一覧へ戻る]