音声ブラウザ専用。こちらより本文へ移動可能です。クリック。

NIKKEI

NIKKEI AD Web

広告申し込みに関するお問い合わせはこちら

English Page

広告手帖

第11回:『ブランドスタイルの創り方-1』/
グラムコ(株)代表取締役社長 山田敦郎
第11回:『ブランドスタイルの創り方-1』

最先端のブランディング手法

前回のコラム掲載から今回までの間にアップル社の創業者は逝ってしまった。アップルスタイルの守護神がいなくなったことで、同社のコミュニケーションは変わるのだろうか。ジョブス氏のDNAが同社にしっかり組み込まれていることを期待したい。

さて今回は、ブランドスタイルの具体的な構築方法について言及したい。
今年はブランディング手法そのものの進化を紹介する、と年初に書かせて戴いたが、ブランドスタイルコントロール(ブランド印象管理)はその急先鋒ともいえる手法だ。
これは、シンボルやロゴだけでは描出しきれない世界観を規定するものだ。TVCMで使用する映像のトーンと紙媒体上の広告のトーンを合わせるのは当然のこととして、ウェブやブロシュア、ツール類の表情を合わせるのが望ましいことは誰でも理解できるはずだ。

多岐にわたるブランド関与者

だがそのほかにも、ブランドとステークホルダーとの接点はまだまだある。店舗と関わりのあるブランドであれば、専用什器やVMD(ビジュアルマーチャンダイジング=店頭の視覚的演出)、ショーウィンドウ、ショールームのデザインも、広告を想起させるようなトーンで揃えられていたほうがいいに違いない。最近auの店舗サインが二度目の変更を行ったが、看板やネオンサインもひとつのブランドの世界観と連鎖しているべきだ。
製品パッケージや製品自体のデザインは、顧客のブランド体験という観点から、もっとも重視すべきブランド接点だし、営業担当者は、これらの製品をチャネルバイヤーに売り込む際に、パワーポイントなどを使ったプレゼンテーションを行うだろうが、この中にもすでにブランドの世界観が盛り込まれていなくてはならない。
投資家や株主は、IRを介してブランドに触れているわけだが、こうした場でも世界観の提示を軽んずるわけにはいかない。社員の採用活動の場面でも同様だ。リクルーティングツールも会社説明会も、近年はデザインを駆使したものが増えている。

こうしてみると、スタイルに関与する社内関係者は、国内外の広告・宣伝、広報、IR、人事、CSR、商品開発・インダストリアルデザイン、店舗開発、営業・販売、等々社内横断的に多岐に拡がっていることになる。これらに関わる人は広告代理店、制作会社まで含めると、大手企業では数百人に及ぶ場合もある。
B2B企業でもブランドスタイルを規定する例は近年増えているが、上記の関与部署を見てもらえれば分かるとおり、店頭関係等を除いてさほどB2C企業と変わりないことが理解戴けるものと思う。

さらに付け加えるならば、企業印象という視点でみれば、社員の振舞い方というのも、実はスタイルと関係が深いのである。営業担当者のセールストークはどうか。お客様相談室などでの電話応対者の振舞いはどうか。グラムコでは、「ブランドは人と真実でできている」と説いているが、社員の振舞いや行動姿勢は何よりも大切なブランド接点といえるだろう。

スタイルガイドの内容とは

多岐にわたる社内・社外関係者にブランドスタイルを理解し、実践してもらうために、「ブランドスタイルガイド(ライン)」を指針として提示することになる。
このスタイルガイドとは、一体どういう内容で構成されているのか、ご覧になったことがない方も多いだろうからご紹介しておこう(図参照)。

(図)ブランドスタイルガイド


まず、冒頭でブランドコンセプトをしっかり説明する。ブランドの教科書ともいえるインターナルブランディングツール=「ブランドブック」(ブランドコンセプトを社内共有するための冊子。理念ブックやアクションブックなど呼称は様々だ)を社内配布しているケースも多いが、ブランドスタイルは当然ブランドバリューやブランドビジョン、ブランドパーソナリティなどのコンセプトに準拠しているものだ。だから改めて、コンセプトの振り返りを行っておくことが肝要だ。
スタイルにおいて、グラムコ流ではブランドコンセプトを「クリエイティブ表現キーワード」に一旦置き換える。クリエイティブに携わる人たちにピンと来る言葉、あるいは一般の社員にもイメージが想起しやすいような言葉に変換して、スタイルの在り方への理解を深める効果を狙っている。あるB2Bの大手先端技術系企業(グループ)では、それを「smart」をはじめとする3つのキーワードとして定めた。そしてまず、コンセプトとキーワードに準じて、カラーパレットを制定した。

前回ノバルティスに関して、コーポレートカラーとは異なる、落ち着いた色系が選ばている、と伝えたが、ノバルティスのパレットは10数色ある。他方上記の企業のスタイルカラーは鮮やかな基本の4色があり、この4色には各々グラデーションのように、同じ色系ラインが5階調用意されている。さらに、スタイルカラーを介添えるサポートカラーも、無彩色系の5階調が準備されている。
さらに、広告やウェブに使用する写真などのビジュアル要素の選定基準も定められている。これらのビジュアル要素基準は、スタイルに合致する「人」「シーン」「モノ」を被写体群別に事例で紹介するとともに、スタイルへの理解を高めてもらうため、スタイルに反する使用が好ましくない事例も、その理由とともに提示している。

別の大手食品メーカーでは、この写真事例を、「不足」→「一致」→「過剰」と3段階で示して、行き過ぎたスタイルの暴走を防止する工夫を施している。
そして最後に、実践の場面でより使いやくするため、これらのスタイル基準を用いた各種フォーマットや、クリエイティブの具体例を添えて締め括っている。
ところが、こうしたスタイルガイドで詳細を規定しても、関係者がすんなり従ってくれない場合もあるのだ。
(次回へ続く)


グラムコ(株)代表取締役社長 山田敦郎(やまだ・あつろう)

慶應義塾大学法学部法律学科卒。総合商社の丸紅を経て87年同社設立。
04年上海・北京に現地法人グラムコ上海を展開。アジアNo.1のブランディングファームを標榜する。日本CI会議体幹事。日本グラフィックデザイナー協会会員、日本広報学会会員、内閣府沖縄美ら島ブランド会議座長ほか。
『ブランド進化論』(中央公論新社)、『探求メジャーブランドへの道』(税務経理協会)、『パワーブランドカンパニー』(東洋経済新報社)、『品牌全視角』(上海人民出版社)など著書多数。



[ 11月15日掲載 ]

[一覧へ戻る]