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広告手帖

クリエイターがニュースをつくる
~企業の声を読者に届ける~
Eyepoints

コピーライター 高崎卓馬氏

――CMプランナー・コピーライターを目指したきっかけは?
 大学時代は、演劇や映画づくりに没頭していました。その頃に自分の考えを形にして人に伝えることの面白さに気がついて、そういう仕事をしたいと思いはじめました。当時は、プロデュースという仕事の概念を理解していなかったので、映画の会社は映画を作っていないのか、とか出版社は本を書いているわけではないのか、と「会社に勤めると作れないんだ」ということを知り、がっかりしたんですね。
 そのなかである日、広告会社をはじめて知りました。会社のなかで「つくれる」環境があることに感動したのを覚えています。広告のことはあまり深く知らなかったのですが、入社してすぐにクリエイティブの魅力にあっという間にとりつかれました。

――高崎さんはどのようにアイデアを生み出しているのですか?
 基本は、まず、話を聞くことです。情報が何よりも大切で、クライアントが何で悩んでいるのか。何をすると喜んでくれるのか。組織としては何を求めているか。個人としてはどう思っているのか。そういう尺度で情報をインプットするようにします。
 情報量が足りないと自分の勝手な想像でそれを補いはじめます。その種の想像は創造の邪魔になることのほうが多かったりします。取材がすべてのスタートです。その取材のプロセスで感じたものがあとで自分たちを必ず助けてくれるので、かなり大事なプロセスだと思っています。
 小説を書くときも同じです。たとえば忠臣蔵をモチーフにしたものをつくるときは、両国の吉良邸から泉岳寺まで実際のルートを歩きました。その数時間のあいだ、「ああここに川があったのか」とか「ああここはゆるやかな坂になっているのか」とか「このお屋敷はこんなに大きかったのか」という自分の肌で感じた情報をもっていると、格段に描写はみずみずしくなるはずです。表現をつくる理由を探すときも、そのディティールをつめていくときも、自分が本当に感じたことというのはとても大切です。それこそがアイデアを生み、そして磨くための道具なんじゃないかと思います。

――日経広告賞優秀賞受賞作品のぐるなびの広告は、どのように作られたのですか?
 原稿を制作するときは、いつも、代表取締役会長の滝久雄氏とディスカッションさせていただきながら進めていきます。「交際費というのはいい面もある。意外と経済というのはそういう規制を緩和することで動き出したりするのかもしれない」とか。いつもマクロな視点を教えられて、僕がその会話のなかで感銘を受けたことを企画の原点にしています。「自分の会社がどうやったら儲かるか」という視点ではなく、「世の中をよくするために何ができるか」という視点での会話はいつも勉強になります。僕が教えてもらったことをみなさんに共有するというのがぐるなびさんの仕事の方法なのかもしれません。

――同じく優秀賞受賞の三陽商会は?
 三陽商会は、歴史のあるクライアントさんです。広告のテーマは、TIMELESS WORKと決まっていたのですが、まずは、クライアントさんと対話を重ねました。歴史のある会社には、必ずいい材料が眠っているものなのですが、クライアントの方々は見慣れてしまっていてそれに気がつかないんですね。
 話しているうちに「色々な有名人の型紙がある」ことがわかり、見つかったのが長嶋茂雄さんの型紙です。ぜひ、広告で再現したいと思って、長嶋さんの了解をとって進めていきました。「会社の資産」を使って企業価値を高めるお手伝いをさせていただきました。

――日本経済新聞に掲載する広告を制作するときは心がけているのは何ですか?
 日経読者は「情報を取りに行く」という姿勢が明確ですよね。そのうえで、やはり、「驚き」がないとだめだと思いますし、最初に手を止めて見てくれて、「読んでよかった」と共感してもらうことが大切だと思っています。
 日経に広告を載せるということは、企業の声をできるだけ、日経読者が聞きたくなるように、そして、心に届くように作って欲しいということだと思います。読者の知的好奇心が刺激され、ある視点をもつことの楽しさ、また、「ニュース性のあるきっかけ」をいかにつくるかを意識して制作しています。

――「ニュースをつくる」以外の新聞広告の使い方は?
 そこから先は「変化」が大切だと思います。同じ新聞でも日経と他紙では、新聞社と読者の関係が全く違います。今は1つのメディアで完結するのではなくて、そのメディアでコンテンツに触れた人が「こんなおもしろいものがあったよ!」と言ってくれることが大切です。そうやって新聞を起点に波がおきる状態が広告の理想の形です。
 また、「みんなの逆を行く勇気」も大切だと思っています。「ビジュアル志向の広告」がいいという声が大きければ、「文字だけの広告」を作ってみる。逆もまたしかり。常に人とはちがうことを考え「新聞広告はこうだ」と決め込まないほうがいい。「典型的な新聞広告」という発想を重視しすぎないことが、大切だと思っています。

――メディアが多様化したことで、仕事の仕方や内容などに変化はありますか?
 特にありません。メディアの多様化もすべて変化の途中なので、その変化に右往左往して本質を見逃すのではなく、こういうときこそ「変わらない部分」をみつめてその価値をきちんと今の時代にフィットするようにしたいと思います。そのうえでみんながどう言うかではなく、自分の肌の感覚を信じて変化にアジャストするということが重要だと思います。
 日経に掲載する広告を制作する時には、「自分がどう読んでいるか。自分がページをめくったときにどう感じるか」という感覚を持つことが大切だと思っています。「今、日経新聞とは」とか「新聞というメディアとは」とかをいつも考えている訳ではなく、日々の日経の広告を見て、「日経でこういう使い方があるのか。今の時代っぽいな。」とか、逆に、全く違うところでみたものを、試行錯誤して使ってみるといった感じですね。

――広告媒体ごとにクリエイティブを変えるのでしょうか。
 もちろん、変えます。クリエイティブの表現手段として、選択する媒体は必ず伝えます。媒体選択は、企画の一部と言ってもいいかもしれません。

――クリエイターがメディアプランナーになっている?
 そういうところはありますね。特に最近はそういった傾向がありますし、社内でも、様々な部署の人が意識しています。私は、昔から自分の関わったクリエイティブがどのような媒体で消費者に届けられているかにとても興味があって、自発的に取り組んでいたのですが、やっとその考え方が普通になってきたという感じがします。

――クリエイターとして、日経であったらな、と思うものはありますか?
 例えば、日経広告賞を受賞したクリエイターには、日経に掲載されている広告の情報がまとまっていて、「日経の広告のトレンド」がわかるものを定期的に提供してもらえるというのはどうでしょうか?
 そういった会員制のシステムがあると、今後も、クライアントに自信を持って日経への掲載を勧められるヒントを得られやすいと思います。何か「私たちは選ばれた」と、プライドをくすぐってくれて、クライアントのお役にも立てる仕組みは、出来ないでしょうかね(笑い)。

高崎卓馬氏
早稲田大学卒業後、同年電通入社。クリエーティブ局に配属。
最近の仕事は、ぐるなび「忘年会はお祭りだ。」、三陽商会「TIMELESS WORK SANYO」、
全日本空輸「ココロノツバサ」、 サントリーホールディングス「 オランジーナ〈ムッシュはつらいよ〉」、「オールフリー」、
東日本旅客鉄道 「行くぜ、東北。」、「ウフフ北陸新幹線」など。
2013年・2014年日経広告賞、2010年・2013年クリエイター・オブ・ザ・イヤー など国内外の受賞多数。
映画・演劇・ドラマの脚本や、作詞も手がけ、2012年、『はるかかけら』で小説家としてもデビューしている。

[ 3月25日掲載 ]

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