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広告手帖

レタッチ技術で広告ビジュアルの質感を高める
ライジンCGデザイナー 正木啓五氏
Eyepoints

ライジンCGデザイナー 正木啓五氏

大サイズの新聞原稿のインパクトに魅力

――普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
 フォトレタッチといって、一般的には画像処理と呼ばれる仕事です。写真や3DCGを加工して、最終的に質感の高いオブジェクトとして表現する仕事です。例えば、水や人などの対象物を合わせて一つの写真に仕上げたり、スタジオで撮った人物を空間の写真に合成して配置したりする際には、リアリティーやセンスが必要になります。
 デジタル技術が普及して、仕事の効率はよくなりました。フィルムの頃は1週間かかった工程が、デジタルだと2、3日で済むので、タイトなスケジュールの中でクオリティーを保つよう留意しながら進めています。

――どんな媒体の広告を手がけられているのですか。
 新聞や雑誌、ポスターなどの紙媒体や交通広告の他に、WEBなどのデジタル媒体も増えてきました。私が扱う仕事では、昔に比べると紙媒体の比率は小さくなってきている印象はありますが、新聞の全30段や15段といった大きなサイズの原稿は訴求力がありますし、作り手である私個人としては紙媒体のほうが思い入れがあります。目に焼きついて、形に残る紙媒体はやはり魅力があると思います。
 新聞に元気がないといわれはしますが、今後もなくなることはないでしょう。そこに掲載される広告、特に大きなサイズのビジュアルを作るときには、訴求力のある良いものをつくろうと気持ちが高ぶります。中でも日本経済新聞はビジネスパーソンが読むビジネス寄りの媒体という印象があって、広告ターゲットもはっきりしているので、原稿のビジュアルもそれらターゲットを意識して制作しています。

――仕事をする上での工夫やこだわりがあれば教えてください。
 例えば全30段見開きの新聞広告といった大きなスペースの広告の場合は、初見のインパクトがすごく大事だと思っています。そんな広告を制作するときは、作った原稿を翌朝に違う部屋で眺めたり、スマートフォンの画面などデバイスを変えて見たりと、異なるシチュエーションで試してみて、初めて見た人がどう感じるのかを意識しています。

制作チームのイメージの共有が大事なポイント

――2014年の日経広告賞生産財・産業部門優秀賞を受賞した東芝の広告制作に携われました。広告制作の背景を教えてください。
 この原稿はLEDが照らすニューヨークのグランド・セントラル駅の風景を大写しにしているのですが、普通のカメラではこれほどのワイドな空間は撮れません。なので、駅構内の天井付近と地面付近を別々に撮って、それらを合わせる形で全景写真とし、天井や壁を補正してより自然に仕上げていきました。また、人の動線もよりリアルにするため、時系列で撮った写真を合成して人を配置、整理していくという作業をしました。一連の仕事では、広告主や広告会社の方々、プロデューサー、アートディレクター、デザイナー、フォトグラファーなどの他に私たちレタッチャーがいましたが、皆が同じ方向を向いて、イメージの共有がうまくいくと質の高い作品ができるということが実感できました。

――同賞の建設・不動産部門優秀賞を受賞したダイビルの広告制作にも関わっていらっしゃいますね。
 受賞した広告は、大きなビルそのものの写真をモチーフにしています。シンボリックで質感豊かに、しかし作り物っぽくしないというオーダーだったので、シリーズ展開する最初の原稿を手がける際に表現の基準を作りました。あまり凝りすぎると逆に不自然になってしまう難しい作業でしたが、おかげさまで評判も良く、感謝しています。
 この広告に限らず、写真とボディーコピーの字体や字間との兼ね合いも大事で、例えば白い背景の上に白い文字が乗って見づらくならないように、背景に「座布団」という黒いレイヤーを敷いたりします。その敷き方にもこだわりがあって、写真として不自然にならないように、自然に濃度を落としながら文字を見せるなど、工夫のしがいがあります。さらに、ボディーコピーの「温度感」に合わせて、使う写真の硬軟も意識して調整したりします。

――若手クリエイターに向けて、広告制作する上でのアドバイスはありますか。
 自分のセンスを信じて、自分のやりたいことを続けていくことが大事だと思います。広告主のリクエストと、私たち制作者のセンスや手法がマッチすると、結果的に人に伝わる原稿に仕上がるものです。広告主の要求に対して仕事でどう応えていくか。その技術やノウハウを伝えていきたいと思っています。

正木啓五(まさきけいご)氏
CGデザイナー、レタッチャー。1970年生まれ。98年アマナ入社。2011年第64回広告電通賞 準新聞広告電通賞/食品・飲料部門最優秀賞、2014年第63回日経広告賞生産財・産業部門優秀賞、同賞建設・不動産部門優秀賞など受賞多数。

[ 7月13日掲載 ]

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