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広告手帖

新聞広告は時代の風 本質を伝えることが共感を呼ぶ
アートディレクター 藤田誠氏
Eyepoints

アートディレクター 藤田誠氏

――今、広告づくりで大切にしていることは何でしょうか。
 企業とかブランドの「らしさ」を大切にしています。ズレがあると背伸びや格好悪さにつながる。もともとのなかから引き出していくのは正しいやり方。その人は気づいていないんだけれど、もともと持っている「らしさ」を引き出して最大化していくことでしょうか。

――優れた作品を生み出すために工夫していること、こだわっていることは何でしょうか。
 若いときは何も無いところからアイデアをひねり出すような苦労をしなければ、と考えることも多かったのですが、いま、アイデアを生み出すための私の考えはちょっと違います。
 仕事では、広告目的に沿って私たちが解決しなければならない事情や与件があります。議論してきたテーブルの上にある膨大な情報を整理し、関係者が言っていることの本質を探っていくと、徐々に情報はシンプルになっていきます。情報に生きた意味をもたせメッセージにしていく。一方、私の仕事であるアートディレクションには、ワンビジュアルにメッセージを載せなければならない使命があります。ビジュアルは理屈だけで構成されません。創ったビジュアルを関係者に提示して、「そう、それ!」となる瞬間、直感に響く感覚を目指します。内包された与件をぎゅーっと凝縮していく感覚。アイデアをそぎ落とすよりも圧縮していく感覚ともいえます。

――時代の変化をどう感じ、作品に取り入れていますか。
 見ているもの、感じているものがベースにあることは事実。格好悪いことはやりたくない。例えば、車メーカーには昔から「走る喜び」のような概念はあります。これは決して古いものではなく、本質的な部分ともいえます。飾られた世界、夢のような世界よりもリアルな世界のほうが共感性が高く、ターゲットと商品が適度な距離感を保つことができます。特別新しいことをやらなければいけないという義務感は余計なもののような気がします。私が担当しているブランドに限っていえば、ブランドのイメージというものは消費されるというよりは蓄積されていくものと感じています。

――広告メディアの中での新聞についてご意見をお聞かせください。最近の新聞広告についてどのようなことを感じていらっしゃいますか。
 新聞の信頼性は重要で、新聞はまずやるべきメディアだと思っています。特に企業の思想や哲学などの「考えた結果」を伝える際には、伝統的に言われているとおり、効果の高いメディアです。新聞広告の公共性の高さ、それは端的に言えば、同じ紙が朝何百万という家庭に配られ、いろんな人が一斉に読む、それは改めて見てもすごいことです。一気に伝わるダイナミズム、それが新聞の魅力でしょう。

――制作を手がける上で、最近感じることは何ですか。
 デザイナーの仕事は、全体の絵を考え、フェーズとフェーズをつなぎ、必要があれば方向を伝えつつカメラマンと一緒に撮影し、ここに行きたいというプロセスを確かにしていくことです。最近感じることとしては、要求されるスピードがものすごく速くなっていること。試行錯誤する時間はほとんどありません。メディアサイドの技術革新によって工程は確かに短縮化されていますが、広告主サイドでも確認経路が複線化しており、締め切りぎりぎりになって最終決定に至ることもあります。時間短縮は制作全体の工程に及んでおり、そのスピードのなかでやり抜く大変さをしばしば感じています。

――日経広告賞を受賞したマツダ、オンワード樫山の広告について企画背景や狙いなどをお聞かせください。
 マツダの作品は、「統合ブランドコミュニケーション」として”Be a driver”というメッセージのもとにクルマが提供するすべての価値を「走る喜び」に集約してビジュアルを考えたものです。個別の車種、技術、安全、サービスをすべて一つのメッセージで語ることで効率の最大化も狙っています。実は、”Be a driver”には「楽しく運転する」という意味と、「もっと人生を輝かせよう」というライフスタイルの提案につなげる意味と二つの意味を込めています。
 オンワード樫山の場合は、テーマカラーの赤を鮮明に打ち出しつつ、ビジネスマンターゲットに対し、ダッフルコートという商材を提案しました。冬の入り口という季節感のなかで少しの遊び心と少年に戻ったような印象付けを狙いました。突然やってくる季節、冬。出会いがしらのような感じを表現に込め、冬のシズル感を打ち出しました。雪の木立に着せた演出も、冬の季節感と変化の衝動を強調するためです。

――若いクリエイティブ・ディレクターに向けて広告制作上でのアドバイスをお願いいたします。
 意識としてはまだ若手というつもりでいたのですが(笑)。日経という堅めのイメージがある媒体だからこそ、そのなかで大胆なことができればより目立ち、効果も大きいと思います。日本を動かしていくような人たちに感じてもらい、日本が元気になるのであれば素晴らしいこと。大胆な表現が最も効果を出せる媒体が日経なのではないでしょうか。新聞は「いまこれなんだな」というイメージが作りやすい。時代の風、ブランドの勢いのようなものが感じられるのが好きなところです。感じてもらえれば、知らず知らずのうちにブランドのイメージが蓄積されていきます。新聞という舞台、広告賞でクリエーションを競い合うというのは意義があることで、これからも続けて行ってほしいと思います。

藤田誠(ふじたまこと)氏
1970年生まれ、金沢美術工芸大学卒業。株式会社博報堂を経て、2011年株式会社藤田誠デザイン設立。
受賞歴―カンヌ広告祭メディアライオン(GOLD)、ロンドン国際広告デザイン賞(SILVER)、ニューヨークADC AWARD INSTINCTIVE MERIT、クリオ賞、TIMES ASIA PACIFIC広告(GOLD)、日経広告賞、朝日広告賞、JRポスターグランプリ、電通賞ポスター部門グランプリ、神奈川新聞広告賞グランプリ、ほか。

[ 8月17日掲載 ]

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