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広告手帖

新聞広告のリアルな感覚を大切に
企業の課題解決というゴールに向けて
コピーライター 小川祐人氏
Eyepoints

コピーライター 小川祐人氏

――広告クリエイターを目指したきっかけなどを教えてください。
 大学では社会学を学び、広告関連の雑誌を読んだりしているうちに、社会で広告がどのような役割を果たしているかに興味を持ち、職業として広告をつくりたいと思い始めました。進路に迷っていた大学三年時に、広告学校の生徒募集に応募したのがきっかけになります。その講師の方々の、世の中に対する独自の視点に憧れを抱いたのを覚えています。新卒で電通に入社し、2年目からクリエーティブ局に配属、広告・CMのコピー制作を手掛けて7年になります。

――広告制作で小川さんのアイデアの出し方やこだわりを教えてください。
 制作の現場では、沢田耕一さん、磯島拓矢さんはじめ、たくさんの先輩方から仕事を教わりました。磯島さんからは「広告にあるゴールを見失わないようにする」という姿勢を学びました。広告を見た人の印象だけでなく、企業がどういう課題を解決できるのか、最終的にどう人を動かしてゆくのか、そのゴールに向けてアイデアを煎じ詰めるよう努めています。もう1点、大切なこととしては、当たり前のようですが「きちんと人の話を聞く」ことです。コピーを自分の思い入れで書いても、独りよがりになりがちです。企業のこと、商品のことをきちんと勉強し、担当者の方々のお話を聞いた上で、チームで議論しながら仕事を進めていくことでアイデアが生まれてくると信じています。

――コピーには短くワンフレーズのものもありますが、読ませるための長いコピーもありますね。
 自分たちはどういう会社なのか、というステートメントの重要性は大きくなっていて、長いコピーを書けることはとても大切だと思います。これも磯島さんから学んだのですが、しっかりした背骨をもつ文章を作ることで、制作者と経営者との距離が縮まっていくのを感じています。「どうすれば読んでくれるだろう」「どうすればふり向いてくれるだろう」ということは、コピーを書くときに意識するようにしています。

――2015年日経広告賞では、小川さんがコピーを担当したベネッセホールディングスのシリーズ広告が大賞を受賞しました。制作チームの一員として携わったこの作品について教えてください。
 ベネッセホールディングスが昨年経営戦略や組織を刷新する中で、コミュニケーションワードを再開発する流れが出てきて、そこにメンバーとして加わらせていただくことになりました。ブランドの再構築を具体化するために、プレゼン案として磯島さん、小野麻利江さんと一緒に同社のタグラインを出しあっていました。結果的には、私が出した「人は、一生育つ。」が採用されたのですが、狙いとしては、原田社長が目指されている「人を起点にした幅広い事業展開のあり方」を大きく打ち出すことでした。「人」を主語にして、子どもから大人まで幅広い世代に共感してもらうことをコピーの目的としています。学生時代に訪れた、直島のベネッセミュージアムにあるアート作品から受けた私個人の印象も、発想の一助になっています。

――受賞広告が掲載されたのは2014年11月1日で、広告にも「エリアベネッセ」がオープンする説明があります。
 同社は顧客との接点として、地域拠点である「エリアベネッセ」を位置づけています。「ピープル・ビジネス」をリアルに展開する場として、子どもから大人まで自由に相談ができ、それぞれの成長に寄り添ったサポートを受けられる、そんな場所です。オープン当日に広告を出稿し、新しいベネッセの具体的な展開を提示しています。

――これからの新聞広告の可能性についてお話しください。
 消費者を取り巻く情報量が増大する時代、新聞は読者が「立ち止まって見る」メディアです。テレビでは企業・商品がメジャーに語られ、ウェブでは数多くの情報が消費されるなかで、新聞は企業の理念やこれからの取り組み、例えばCSR活動などをきちんと読者に提示する。身近な場に例えて言うなら、新聞はたたずまいを直した客が店主と静かに向き合う「オーセンティックなバー」のような場所。対してテレビはレストラン、ウェブがにぎやかなパーティのような位置づけでしょうか。「企業がどう見られたいか」をコミュニケーション上のゴールとすれば、新聞は厳選された素材を提供するところに価値があると思います。奇抜な企画でなく、正統派の新聞広告らしさを追求するのは、若い世代にとって意外と新しいことのように感じられます。新聞の資産である信頼性を今一度広く発信することで、新聞広告の活用度や価値も高まっていくのではないでしょうか。

――ネットが情報取得の中心になった時代に育った小川さんから見て、新聞はどう映りますか。
 日経は電子版で読んでいます。新聞離れについてはずっと言われ続けていますが、広告の内容次第で新聞そのものをリフレッシュすることはできると思っています。先日、とある講演会で、とある方が「これからはアラカルトの時代になる」ということをおっしゃっていました。個人が自由に情報を編集して楽しむ時代だ、と。新聞も、読者のニーズに応じたカスタマイズ性があると読者の裾野が広がると思います。電子版をはじめとした様々な形態でコンテンツに触れていくことは、とても有用だと思っています。

――新聞の特徴は、一言で言うと何でしょうか。
 新聞のもつリアルな感覚、言うなれば「手ざわり」のような感覚は他のメディアにはないものです。それまで知る人だけの範囲にとどまっていた会社が「水面下」から浮上し、成長や拡大の局面に転じるときに、企業の理念や主張をきちんと切り出してリアルな場に置くことはネットだけでは難しい。消費者とリアルな接点をつくる重要性は、ますます上がっていくのではないでしょうか。

――今回、作品が日経広告賞大賞を受賞したことについて最後に一言いただけますでしょうか。
 大賞に選んでいただいた広告として、新たな価値が付加されたのではと感じています。新聞社の審査で選ばれたということで、広告メッセージがオーソライズされ、原田社長の意思がより正確に浸透していくのではと期待しています。さらに、昨年の出稿をスタートとして、受賞というゴールまでのストーリーができたことは大変うれしいことです。ただしこの原稿は、私個人が作ったわけではありません。ベネッセの方々と制作スタッフ陣、チーム一同で作り上げたもので、制作の過程では自分自身、多くのことを学び成長した実感があります。この一年を振り返るなら、「人は、一人で育たない。」、周囲に育てられながら成長していくのだ、といったところでしょうか。

小川祐人氏
コピーライター
1985年神奈川県横浜市生まれ。東京大学文学部卒。2008年株式会社電通入社。
最近の主な仕事:ベネッセホールディングス「人は、一生育つ。」、NHK「受信寮の人々」、東京ガス「きょうも、いい電気。」「世界一かんたんな親孝行。」、HOME'S「探しているのは、未来です。」、KDDI「ツナガルチカラ」など。

[ 11月8日掲載 ]

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