日経グリーンインフライニシアチブ
~未来に継承する森林・都市・建築~
森林価値創造シンポジウム


主催|日本経済新聞社 日経BP
メディアパートナー|FINANCIAL TIMES

水循環と脱炭素支え 森林を次世代へつなぐ

 生物多様性の保全や脱炭素への取り組みは、企業にとって重要課題となっている。その解決策として注目されるのが森林の活用だ。日本経済新聞社は2025年に有識者会議を2回実施。その議論を踏まえ、2025年12月3日、東京・日本橋で「日経グリーンインフライニシアチブ:森林価値創造シンポジウム」が開催された。次世代につなぐ森、都市、建築について各方面の立場で最新の研究、取り組みを語った。(肩書は開催時)

シンポジウム会場

講演

再造林の徹底で炭素中立を

熊谷 朝臣

東京大学大学院
農学生命科学研究科 教授

熊谷 朝臣氏

 森林は地球の水循環を支える役割を担う。植物は葉の気孔を開いて二酸化炭素(CO₂)を取り込む際に大量の水蒸気を放出する(蒸散)。雨が降ると雨水の一部は葉や枝で遮断され、地面に届く前に蒸発する(遮断蒸発)。これらをあわせて「蒸発散」と呼ぶ。
 世界平均では、降った雨の約20%が遮断蒸発、約30%が蒸散により大気に戻る。残りが河川に流れ込み、一部は地中に浸透して地下水となる。森林の水源涵養(かんよう)機能とは、この流出量を適度に保つ働きにほかならない。
 この水の流出を安定させる鍵となっているのが、土壌の健全性である。健全な土壌は森林によって作られる。落葉や枯死木が微生物によって分解されて、水を十分に蓄える土となる。さらに、その土壌で育った植物の根が土壌を保持し、斜面の浸食や水の急激な流出、すなわち土砂災害を抑える。

気候変動にも影響
 森林は気象にも大きな影響を与えている。健全な森林がある地域では蒸発散が持続し、湿潤な空気が再び降雨をもたらす。一方、森林破壊が進むと蒸発散が弱まり、内陸へ向かう大気は乾き、降雨は減少する。大陸スケールでは下流・内陸の降水減少が顕著となり、森林存続に必要な水が途絶する。
 アマゾンの森林破壊が続いた場合の降雨量をシミュレーションした研究では、森林破壊が続けば、2000年からの50年間で、流域の降水量が20~40%減少しうることが示された。森林破壊は降雨減少という気候変動を招き、それがさらなる森林破壊を誘発する。
 経済活動のための土地開発は必要だが、一定限度を超える破壊は気候・生態・地域経済の全てに不利益をもたらす。科学的根拠に基づく限度設定が不可欠である。

生産活動の変革必要
 森林は炭素の吸収・貯蔵にも寄与している。地球全体の炭素収支では、毎年の排出が10㌐㌧炭素、うち2.5が海洋、2.8が陸域の森林により吸収され、吸収しきれない残差が大気中に蓄積して温暖化を進行させている。
 新たに森林を造成した場合、陸域の吸収を現状の2.8から約5へと増やすことができる。これは地球規模で森林の拡大可能な面積・約9億㌶と、その成長に伴う年次吸収増分が見込まれることによる。ただし、これが森林機能に頼れる上限であることに留意されたい。
 その上で残りの炭素を吸収するには、人間の生産活動を変えていく必要があるということだ。エネルギー・産業部門で、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの活用や製造時の温暖化ガスの排出を低減するテクノロジーの開発などを進めていく必要がある。
 日本においては、森林によるCO₂吸収量の再評価が進んでいる。従来の推定は約7600万㌧/年とされてきたが、我々の試算では、これより大幅に多い約1億6900万㌧という数値が得られた。また、これまでの「樹木の高齢化でCO₂吸収量が徐々に低下する」という通念は覆され、現在の高い吸収量は未来も、長期にわたって吸収量が変わらないことがわかった。
 50年までのカーボンニュートラル達成へ、不足分は約1億㌧となる。決して達成不可能な数字ではない。日本では「森林+テクノロジー」の組み合わせでの達成が可能ということだ。

CO₂長期貯蔵増加へ
 林業は時間と場所をずらしながら、「木を植える、育てる、切る、使う、また植える」サイクルを実施している。森林内の炭素貯蔵と木材製品内の炭素貯蔵の双方を累積させる優れたシステムだ。
 ただし、改善の余地は大きい。日本の伐採は面積比で約1.29%にとどまり、伐採跡地の再造林は約40%弱と低い。この伐採率を約2倍の2.5%に引き上げ、伐採地の再造林を100%と徹底し、かつ伐採材を腐朽・焼却させることなく長期貯蔵へ最大限まわしたい。実現すれば、60年における森林と木材の総炭素貯蔵量は現状継続ケースの3倍近くにまで増加させることができる。
 長期貯蔵の手段としては、大規模木造建築による数百年スケールの炭素固定がまず挙げられる。さらに長期の固定を狙うなら、木材を腐朽させない嫌気的環境に埋設・沈設する方法もある。木材をまず利用して経済的価値を発揮させ、その後の使用済み資材や利用困難なバイオマスを、低酸素条件下に隔離する。温暖化抑制の追加手段として有望である。
 再造林を中核とする森林経営、木材の長期活用と嫌気処理、そして技術的排出削減を併せて実施することが、カーボンニュートラル実現の現実的シナリオである。

炭素貯蔵グラフ 炭素貯蔵グラフ 「切ったら植える」を徹底することで大量の炭素を蓄えることが可能に

講演

「リジェネラティブ」建築へ

墓田 京平

梓総合研究所
代表取締役社長

墓田 京平氏

 産業革命以後の建築は、エネルギー多消費型で、環境への配慮が後退していた。次世代の建築は現状維持の「サステナブル」を超え、環境を再生・更新する「リジェネラティブ」であるべきだ。
 このリジェネラティブな建築の在り方を示すものが、国際リビング・フューチャー協会が開発したグリーンビルディング認証LBC(Living Building Challenge)である。環境負荷の低減にとどまらず、生態系の再生、利用者の健康、地域との調和までを評価対象とする包括的な制度となっている。
 日本でこうした建築を実現するには、木が及ぼす「心身」「社会」「環境」への影響を考慮することが重要だ。言い換えれば、ウェルビーイング視点の空間論、サーキュラーエコノミー起点の経済論、サステナビリティーを軸とする方法論を組み合わせて考えたい。
 当社では、これら3つの論を統合し、具体的なアプローチに落とし込んだガイドブックを制作中だ。計画から実現まで一貫して活用できる指針として、リジェネラティブ建築の推進につなげたい。

リジェネラティブ建築アプローチ 木が心身や社会、環境に与える影響を意識しながら設計する

講演

地産材使用の循環築く

古郡 宏光

梓設計 執行役員
アーキテクト部門 BASE03
ゼネラルマネージャー

古郡 宏光氏

 リジェネラティブな建築では、単に装飾に木を持ち込むのではなく、都市に生命の循環を編み込むものでなければならない。
 心身面では、木が感性を刺激する建築物を目指す。横浜市立万騎が原小学校の木造校舎では、森の学校をコンセプトに、校舎全体に木材を用い、自然系塗料を使ったほか、屋根や周辺の樹木とスカイラインを連続させ、校舎を風景に溶け込ませた。
 社会面では、地域と経済をつなぐ建築を使命とする。地域材の循環をつくる仕組みが特に重要で、宮崎県小林市新庁舎では地産材を使用し、伐採から施工まで県内で完結する循環を築いた。
 環境面では、都市が森を再生させる建築を掲げ、現代建築の手法と木造のハイブリッド化で炭素を固定(カーボンプール)し、木材の安定的な活用を図る。設計を担当した国立競技場はその代表例であり、その後に開発した鉄骨と木を併用する「CROSSWOOD」工法にもつながった。
 鉄・コンクリートの合理性と木の再生力を重ねる「紡木手(つむぎて)」として、新しい建築を探り続けたい。

講演

満足度上げる木の建築

水落 秀木

清水建設 設計本部
設計企画室
木質建築推進部 部長

水落 秀木氏

 脱炭素社会の実現に向け、建築物への木材利用が進んでいる。
 環境面では、温暖化防止やCO₂固定化の観点から木材利用が着目されている。行政も、地方創生や木材利用促進を目指して、2010年に「公共建築物等の木材利用促進法」、21年に民間建築物も対象の「都市の木造化推進法」を制定し、後押ししている。
 技術面では、さまざまな耐火木質部材の研究・開発が進み、中大規模の木造建築が可能になっている。民間においても、環境経営や社員の健康・快適性、ウェルビーイングの観点から木造建築への関心が高まっている。
 国内の中高層の木質建築は着実に増加しており、当社も国内最大級の高層木造ハイブリッド構造オフィスを実現し、さらに複数のプロジェクトを計画中だ。海外に目を向ければ、欧州や豪州では、日本に5年以上先行する形で、木質高層建築が造られている。
 当社では、脱炭素・資源循環・自然共生を掲げ、自社活動による環境負荷のゼロ化と、顧客や社会へのプラスの環境価値の提供を掲げている。その中核の一つが、木材活用を軸とした森林資源の循環利用である。群馬県川場村などで展開する森林育成プロジェクト「シミズめぐりの森」と連動させながら、木を育て、使い、エネルギー活用へつなぎ、さらにリサイクル・アップサイクルまでを含めた「シミズ・ウッドサイクル」を構想している。
 木質空間はサステナビリティーとウェルビーイングを両立させ、非木質空間と比べて利用者の満足度を大きく高める効果がある。一方で、耐震性・耐火性・経済性が課題だ。当社では、木材と鉄やコンクリートを組み合わせた部材・接合部技術「シミズハイウッド」シリーズを開発し、鉄骨・RCと同等の耐震性、必要な耐火性能、そして施工性を確保してきた。
 この技術を生かした最新の事例が、25年に竣工した地上12階建ての第一生命京橋キノテラスである。約1100立方㍍の国産材を活用し、長スパン無柱空間と高意匠・高性能・高施工性を同時に実現した。
 世界最大の木造建築としてギネス認定もされた大阪・関西万博の大屋根リングの建設に参画したことも大きな成果である。当社は海に面した南東工区を担当し、伝統の貫工法に現代の技術を組み合わせて実現した。
 今後も、さらなる木の建築の普及と森林循環を実現していく。

木質空間のオフィス 木質空間のオフィス 第一生命京橋キノテラス 国産材を活用した第一生命京橋キノテラス

イントロダクション

「一社一山」で関与深めて

長野 麻子

モリアゲ 代表

長野 麻子氏

 世界で森林減少が進む一方、日本では森林資源が増加している。特に人工林面積は世界第8位と大きい。森林は木材生産にとどまらず生物多様性保全、気候変動緩和、土砂災害防止、水源涵養、健康増進など多様な価値を持ち、年間約70兆円規模にのぼると試算されている。東京大学の研究では森林によるCO₂吸収量の評価が上方修正されていることとあわせ、森林の価値は一層高まるだろう。
 炭素中立、循環経済、自然再興を支える基盤となる森林は「自然資本」である。これをどのような形で次世代に引き継ぐのか。林野庁は目指す姿として「多様で健全な森」を掲げている。従来の人工林の循環活用に加え、里山の再生、経済効率の低い奥山では広葉樹の交じる天然林に戻していくなどの機能を引き出すことが求められる。また、森林を守ることは川や海の生物多様性の保全にもつながる。流域全体で森林を支える視座が重要になる。
 豊かな森林を次代に継ぐにあたり期待されているのが企業の役割だ。多くの企業、経済活動がサプライチェーンを通じて自然資本に依存しており、その維持・再興に主体的に関わってほしい。
 2025年11月にブラジルのベレンで開催された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は「ネーチャーCOP」とも呼ばれる。熱帯雨林保全のための国際基金が創設され、「森が森であることに対価が支払われる」時代に入ったといえる。日本も国際的な枠組み「森林気候リーダーズ・パートナーシップ(FCLP)」が示す「責任ある木造建築の原則」を承認。建築分野でも森まで含めた持続性に責任を負う流れが形成されている。
 国内でも、政府が地方創生2.0で、森業の推進を掲げる。森業とは、木材供給だけでなく森林の多面的な機能を生かし、山村地域の活性化や所得向上、雇用創出を図る新たな産業・取り組みの総称である。
 企業の森林への関わり方は様々ある。森林を所有するほか、公有林のネーミングライツ、企業版ふるさと納税の活用、J−クレジットの購入、自然共生サイトの支援、社員研修での森林空間利用、地域材のオフィス・建築活用、山村でのワーケーションなど選択肢は広い。「一社一山」の精神で関与を深めてほしい。
 森づくりに取り組む企業は、年々増えている。木材を直接利用する企業はもちろん、水資源に依存する企業、カーボンニュートラルの対応を進める企業、地域貢献や社会課題の解決を志向する企業、さらには健康経営の一環として参加する企業もあり、動機は多様だ。これらの活動を見える化・定量化し、地域の歴史や文化への敬意を払い、長期的に継続していくことが望まれる。

森林蓄積の推移 戦後の拡大造林とその後の成長で日本の森林蓄積は着実に増加した

パネルディスカッション

取り組みの評価 可視化進む

  • 長﨑屋 圭太氏

    長﨑屋 圭太

    林野庁
    国有林野部長

  • 速水 亨氏

    速水 亨

    速水林業
    代表

  • 加藤 正人氏

    加藤 正人

    信州大学
    農学部 特任教授

  • 水谷 伸吉氏

    水谷 伸吉

    more trees
    事務局長

【モデレーター】

    長野 麻子


 長野 森林の多面的価値を引き出し高めるには、企業・自治体・大学・市民が長期的に役割分担しながら流域単位で協働する必要がある。企業が活動に参加し、それを継続していくには何が必要か。
 水谷 企業の森づくりをサポートしており、再造林支援や広葉樹植栽のような森林の多様性を高める取り組みを実施し、資金や人の流れをつくっている。近年は、資金提供のみならず、地域材の活用、クレジットの取得・活用、従業員の参画プログラムなど、複合的な関わりが目立つようになった。
 活動に際して、必ず経営層から「本業への影響」「費用対効果」についての問いが出る。その際は1㌶当たりの効果など暫定値でも提示すると理解が進む。単なるイメージ向上ではなく、可視化された価値を多面的に提示することが不可欠だ。
 長野 山林の所有者である民間の山主、自治体、国など多様な主体が、協働を呼びかけるために自ら山の価値を発信することも重要だ。その際の要点は。
 速水 第1に「数字で語る」ことが土台となる。水源涵養や炭素固定については、J−クレジットのような厳密計測でなくとも、蓄積や成長量、施業投入エネルギーなどの基礎データから概算を示せるはずだ。次に「見てわかる美しい森」を整えること。来訪者が樹種多様性などを景観から直感的に納得できる状態にすることが望ましい。
 そして「FSCなどの国際的な基準による森林認証を活用する」ことだ。透明性・トレーサビリティーの確保が重要である。欧州では取得はもはや当たり前で、価格プレミアムは小さいが、未取得であることが不利に働く段階に入っている。日本もこれに迅速に追随すべきだ。ツーリズム、カーボンクレジットの組み合わせにより、複合収益モデルを構築する発想が必要である。
 長野 大事なのは現場の活動であり、活動の評価に多大なコストをかけるのは本末転倒だといえる。評価法は簡便かつ安価に、誰もが使える形にする「可視化の民主化」が重要だ。
 長﨑屋 林野庁で企業の森づくりや木材利用の成果を数値化・可視化する取り組みを推進中だ。「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)」を改正し、企業が森林経営や木材利用による炭素貯蔵量を自社排出から控除可能とする運用を2026年4月から開始する予定だ。
 参考になるのが建築業界の動きだ。木造化により建物内に固定される炭素量や、他工法比のCO₂削減量を算定・開示する実践が進み、投資家や株主への説明に用いられている。
 25年4月には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の枠組みに沿った「森林の有する多面的機能に関する企業の自然関連財務情報開示に向けた手引き」を策定した。林野庁ホームページで企業活動と森林との関わりを分析・評価するための具体的な方法を例示し、先駆的な企業の取り組み事例を紹介している。
 さらに、企業の森づくり活動による水源涵養効果を自ら簡便に評価できる表計算ツールも26年3月に公開予定だ。専門知識がなくても基礎的な試算が可能になる。こうした定量化により、これまで以上に多くの企業が森づくりに参加することを期待している。


難条件の自動計測に挑戦

 長野 技術による可視化の進展の状況を知りたい。
 加藤 日本の森林には、施業コスト高、担い手不足、所有者不明林といった課題がある。これに対する解が計測や診断、施業などの省力化と透明化、すなわちスマート林業だ。我々は長野県内69市町村・17森林組合に課題の聞き取りを行い、AI(人工知能)やドローン、計測レーザーを組み合わせ、資源量の自動解析、松枯れなどの被害木抽出、境界不明地の推定区分作成などの機能を実装中である。
 フィンランドなどの研究機関とも連携しつつ開発を進めている。北欧は樹種が数種類と少なく、計測しやすいが、日本は下層植生まで豊かな多層構造で樹種も多様、地形も複雑だ。それゆえ日本の森林の自動計測は「挑戦的だ」と驚かれる。だからこそ、日本での成功は世界の難条件にも通用するモデルとなる。
 長野 自然資本経営の将来像はどうあるべきか。
 長﨑屋 国有林は国家資本であると同時に、地域資本であるという視点を持って取り組んでいる。樹種構成、野生生物、気候、土壌条件、すべて地域によって大きく異なる。それゆえ、森林経営も多様であるべきだ。国有林でも一律基準の運用に加え、地域の色を適切に反映する運用を重視していく。
 速水 市町村レベルの森林計画は、ともすれば画一的になりがちだ。地方行政・企業・林業者が共創し、生産林・保全林・多目的林といった森林のゾーニングを再設計し、地域の「将来の森」の姿を更新することが必要だ。森林経営管理制度や流域連携、森林環境税の活用も、市町村を核に進めたい。実現するには山村の人材希薄化を補う外部プレーヤーの参画設計と、所有者横断の面的マネジメントが必要となる。森林所有者は説明責任と管理の透明性を高めつつ、自治体・企業と共創する自然共創社会の構築を目指すべきだ。


長期の視点で参画を

 長野 企業は森林価値創造の主軸となり得る存在だ。そうした点を踏まえ、森づくりに参加する企業へメッセージを。
 水谷 可視化の次の段階は「価値化・財産化」である。英国の生物多様性ネットゲインでは、開発後に生物多様性を110%へ回復し、不足分は他地での回復やクレジット購入で補う制度が動いている。オーストラリアの自然修復法のように、修復行為を信用化し市場で取り引きする設計も進む。こうした動きは新たな市場機会と義務の双方をもたらす。企業は制度動向を踏まえ、自然資本へのコミットを本格化すべきだ。
 加藤 社有林整備の体験では、森が良くなるプロセスを実感することで、参加者の喜びや誇り、帰属意識が高まり、メンタルヘルスの改善にもつながる。都市に暮らす人材が自然の時間スケールに触れる教育効果も大きい。経済的KPI(重要業績評価指標)だけに偏らず、従業員ウェルビーイング、地域貢献、流域のレジリエンス向上といった総合的リターンを評価軸に据え、長期での参画を継続してほしい。大学やスタートアップは、その設計・計測・検証のパートナーになり得る。
 長﨑屋 森づくりは人間の経済活動を超える長い時間軸で進む。企業にはおおらかさと長期視点を取り込み、現場に足を運び森と触れ合うことを常態化してほしい。可視化のしくみは行政として整備を進めるので、現場体験と組み合わせ、社内の理解醸成を図っていただきたい。
 速水 林業の本質は木材生産だが、採算が厳しい局面が続いている。多面的機能の有価化と企業連携を組み合わせる自然資本経営への転換が必要だ。森林と人では時間の尺度が異なる。そのため担当者が代わっても理想の森林像を共有しながら、バックキャストで現在の行動に落とし込む設計を望みたい。
 長野 100年単位、流域単位のビジョンを持ちながら、多主体が協働して、次世代へ多様で健全な森を手渡したい。

森林研修 研修の場に森林を選ぶケースも増えている(写真提供:モリアゲ)

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